劇場公開日 2021年6月4日

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「ステレオタイプだがよく出来た作品」グリーンランド 地球最後の2日間 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ステレオタイプだがよく出来た作品

2021年6月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ジェラルド・バトラーは映画「エンド・オブ・ステイツ」や「ハンターキラー 潜航せよ」などで冷静で果敢な主人公を質感たっぷりに演じるのを観たが、本作品でも同じように分析力に長けて行動力のある主人公ジョン・ギャリティを見事に演じている。この人が主演するからには一筋縄ではいかない物語になるのは明らかである。

 突然出現した彗星は、ひとつの大きなものが割れて無数の小さな彗星として観測される。宇宙ゴミが周回軌道を外れて地球に落ちてきても、大気圏で空気との摩擦熱によって燃え尽きることから、学者は彗星もまた、大気圏突入の際の摩擦熱で燃え尽きると推測する。地上の人々は恒常性バイアスもあって、学者の安易な推測に乗っかって、変わらない日常を過ごす。
 ところがひとつの彗星は大気圏で燃え尽きることなく地表に激突。大変な被害をもたらす。他の彗星はまだ地球に向かっていて、その中には巨大な物があり、ジュラ紀の恐竜を絶滅させた巨大隕石よりもはるかに大きい。
 ということで人類絶滅へのカウントダウンの中、合衆国大統領は避難させる住民を選別する。選ばれた人々と選ばれなかった人々に分かれることになり、当然のように選ばれなかった人々の選ばれた人々に対する羨望はまたたく間に怒りに変わる。例によって暴動が起きて店という店は襲撃される。
 ステレオタイプのストーリーだが、ギャリティ一家を襲う不運や被害には自然と感情移入して、ハラハラしたり悲しんだりする。よく出来た作品だ。

 日本で同じ状況を扱った映画を作ると、全く違ったものになるだろう。最終戦争に備えたシェルター作りに日本も最初から参加していて日本に割り当てられたゾーンがあるとして、いざ隕石が到来となったときに日本政府や日本国民がどのように振る舞うのか、想像力は膨らむ。低予算でもできるヒューマンドラマを期待したいところだ。

耶馬英彦