劇場公開日 2021年8月6日

「【8月9日に/2つめの原爆】」a hope of NAGASAKI 優しい人たち ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【8月9日に/2つめの原爆】

2021年8月11日
iPhoneアプリから投稿

この長崎の被爆者へのインタビューを中心としたドキュメンタリー映画は、商業的なことなのか、上映館が少ない。

原爆の日や終戦記念日のある8月だからこそ、このタイミングでとは思うが、どこかに挟み込む感じでも、出来るだけ多くの映画館で、そして、細く長くでも上映して欲しいなと思う。

随分前になるけれども、2つめの原爆は、実は、長崎ではなく、別の場所に投下される予定だったというドキュメンタリー番組を観た。

それは、当時の日本の鉄鋼生産の拠点、八幡製鉄所を有する福岡だった。

だが、それを事前に察知した軍関係者と福岡の人々は、投下予定の当日、つまり、8月9日早朝から、ありったけのタールを燃やすなどして、空から地上を目視出来ないほど大量の煤煙を上げ、その結果、米軍は急遽、予定を変更して長崎に目標を定めたという内容だった。

少し曖昧な記憶だが、そうしたこともあって、広島への原爆投下が早朝だったのに対して、長崎は昼近くになったというようなことも言っていたような気がする。
間違っていたらすみません。

そして、そのタール煙幕作戦に中心人物として関わった一般人の方が、インタビューに答えて、咽び泣きながら、自分は一生、長崎には足を踏み入れることは出来ない人間なのだと語っていたのが、とても印象的だった。

この人に、この作品を見せてあげたいなと思う。

それほど、このドキュメンタリーに出てこられる高齢の被爆体験者は、客観的で、物事の本質を理解するように努め、そして、とても”優しい”のだ。

被爆体験は凄惨なものだった。
多くの人が一瞬にして亡くなり、多くの人が一瞬にして全てのものを失い、ドン底につき落とされた。

その後、進駐してきたアメリカ兵との交流も、実体験を自分の言葉として語っているのだから、リアリスティックだ。

アメリカ兵との交流の思い出を今でも大切にしている人もいた。

原爆を恨んでも意味はない、悪いのは戦争なのだという言葉にも重みがある。

だから、この方達の作品を、先に紹介した長崎への原爆投下に責任を感じている人に観せてあげたいと思うのだ。

最後に、このように、当初、福岡に定められた原爆投下が事前に分かったように、広島への原爆投下も大本営は事前に知っていたことは間違いないと言われている。

なぜなら、アメリカは、新型爆弾の完成を日本に知らせると同時に、無条件降伏を迫っていたことが、記録として明らかにされているからだ。

既に沖縄戦で、多くの一般人が命を落とし、空襲は相次ぎ、本土決戦などやっても勝ち目がないのは明らかなのに、降伏の決断を拒んだ大本営とは、何を考えていたのか、国民の命を何と考えていたのか、どのような下等な組織だったのか、国民が良く考えるためにも、こうしたドキュメンタリー映画の灯を消さないで欲しいと思う。

ワンコ