「「ありがとう」を言わない人間性」そして僕は途方に暮れる あらP★さんの映画レビュー(感想・評価)
「ありがとう」を言わない人間性
登場人物に共感も思い入れもできず、最後までつらいもの
だった。タイトルとなりエンディングにも使われた、若い頃聴いた名曲は失恋の喪失を歌った歌だったが、本作の主題はそこには無いようだ。
冒頭から、主人公の裕一のダメな部分、というか全体的なダメさ加減が描かれる。ヒモのクセに何もしない、やってもらってアタリマエ、感謝の気持ちが無い。パートナーの里美もなぜ我慢して同居しているのかわからない。それは友人の伸二宅に転がり込んでも変わらない。怒られそうになると逃げるように出ていく。ひょっとして、何か欠落した、障害を持った人の生き様が主題なのかと勘違いするほど。
しかしお話はそういう方向にならない。もっと酷くダメな父親が登場する。遺伝だから、それが免罪符になるのか。
案の定、里美は伸二と良い仲になり、裕一は捨てられる。誰もが当然の結末と思うが、里美は罪悪感を感じて泣いて謝り、裕一は伸二との友情を壊した行為を責める。伸二は里美が告げるまで黙っている。これら一連の行動の何れも共感できない。
裕一の姉が、唯一マトモな人物のように思うが、歪んだ人間性を直すまでに至っていない。
ただ、姉に裕一が黙っていることを責められ、自分の気持ちがわからない、説明できないと吐露するところ、ここだけは実感が伴っていた。
やはり、このお話は主人公が障害を持った人間である、という視点を明確に描いた方がスッキリしたのではないかと思う。
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