劇場公開日 2023年1月13日

「途方に暮れるほどの大傑作」そして僕は途方に暮れる まつこさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0途方に暮れるほどの大傑作

2023年1月14日
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・んー。2023のBest10候補に確実に入る…こりゃ凄いよ…凄いて…。まだ今のご時世に邦画をディスる人に是非観て欲しい、邦画の未来は明る過ぎる眩し過ぎると言う事をその目で確かめて欲しい。三浦大輔作品は昔っから面白い作品のオンパレードだけど、今回のそし僕も、とても面白い。(監督が略してたのでマネて略してみただけです)。面白い+如実にレベル上がってませんか…?一生ついて行くよ。映画界の宝。

・ある事が恋人にバレてしまい話し合いもせずただただ不自然に家を飛び出した主人公裕一。スマホの連絡先をスクロールしながら、居させてくれそうな人達と連絡を取り合い転々としていき…という話。私は「何かから逃げる」「人の家に泊まらせてもらう」系の話が、息が苦しくなるのであまり好きじゃ無い。勿論私も生きていく上で沢山の人達に迷惑かけながら生きてはいるけど、目に見える、基本的に防げる迷惑は防ぎながら生活してるので、きっとこの映画の内容も見ていて苦しいんだ…と思ってた。(人の顔色伺う系人間としては、人に迷惑をかけること=死を意味するので…笑)。実際、人に対して何もせず無邪気に無自覚ダメ人間として生きてきた主人公は、色んな人と接して色々気付かされて息苦しさを感じてどんどん逃避行の沼にはまっていく。のだが…。苦しさは感じるのだけど、なのに面白いんだよなあ。何なのだこの感情は。
これまでの知人と築いてきた人間関係がある上で、主人公がこの人と対峙するとこんな感じになるんだ、とか、この人はこんな感じに接してくるんだ、とか、この主人公ありきでの、それぞれの人間の考えや接し方が何か面白いのである。途方に暮れる裕一と、途方に暮れる周りの人々。(しかし根本、優しいのが救いであり泣ける)
そしてこれをただ淡々に描くのでは無く、映画好きで学生時代映画サークルに入っていた主人公というのもひとつのキーポイントとして面白くさせてくれてて。それがあるから、数々の名言や名展開が生まれ、面白い映画として昇華されていっちゃうんだよね…。映画好きの人でこの映画観て少しでも興奮しない人いるんかな。私は、万が一監督が私の事が好きだと仮定(いきなり)してこの映画を作って観せて来てくれたら、あこの人私の事落としに来てるなって思うぐらい、映画好きをグッとさせる言葉・台詞・展開が複数散りばめられてて大興奮と変な笑いと変な涙が度々起こり、自分の顔の筋肉が忙しくなっちゃってた。

・映画サークルの先輩や後輩、そして既に母親とは離婚している実の父親が、上記のような顔筋肉現象を加速させてくれた。特に豊川悦司演じる親父ね…!姉ちゃんの口ぶりから、どんなダメ親父やねんと思いきや、確かに土台は典型的な想像範疇のダメ人間なのだが…それと同時に、この男はそりゃモテるのよ…という事実に直面笑。
一個一個のセリフがクソ程かっこよくて、言い方も言い回しもかっこよくて。(テレビでこの作品観てたら、絶対ノートにメモるペンを止められなかったであろう笑)。言ってる内容はしょうもなかったり世に言うクズ(私がそう思うかは別)発言のはずなのだが、多分、周りに回って芯が一本通っちゃっているので、人に引かれてしまうと共に、人に惹かれてしまう人間になっていた。正直、愛していると言ってくれの次ぐらいにかっこよかった。(※「愛していると言ってくれ」のトヨエツは、生涯の中のいい男ランキングTOP10に入る伝説のイケメンです。私調べ) トヨエツ…無数の映画で見かけはするし、素晴らしい演技力をいつも見せてはくれるけど、久々にトヨエツを惚れ直すという事をこの金曜の夜に体感するとは、思いもしなんだ笑。しかもずっと俺は俺だと言い続けた男がある事が起きた瞬間に見せる、この人も人間なんだなと思わせる言動ね…。それも含めちゃって好きになっちゃうんだわ。(昔の流行語引用するけどダメンズウォーカーはこうして製造されるのだらうか…)

・キャストは、月並みな事言うけどこのキャスト以外考えられへんってぐらい、ピタリとはまったキャスティング。(すみませんが舞台の方は見とりません…チケット取れなかった)
あの演技モンスター陣を、モンスター力を上手い具合に発揮させる脚本・演出の妙な…。素晴らしかった。傑作になる条件のひとつは、やはり誰も、ひとりも、演技力で置いてかれてない事だね。変な話、物語がどう展開しようがこちらのワクワクを絶対に止めさせない演者様の力量に完敗だよ。
そもそもの土台の脚本が最高過ぎる。ロードムービー好きな私、映画好きな人間が出て来る話が好きな私、家族ものも好きな私、恋愛作品沼にはまりがちな私、ヒューマンドラマ大好物な私…全私が震撼しました、全私を震撼させてくれてありがとう。そして、どんでん返しとまではいかないけど、小どんでん展開を繰り返し繰り返し挟んだり。ストーリー展開時や新たな一歩を踏み出す、もしくは周囲から逃げる瞬間、の、その瞬間ごとに出て来る「振り向きざま裕一」のシーンの挟み方など。その辺もまじで良かったし、なんかおしゃれな感じでかっこいい展開・演出なのに、古めかしさも忘れてないような感じでして。古き良きと最新センスと前衛が上手く融合してて…。脚本だけで無く構成やら演出やらもずば抜けてたね…むっちゃ興奮してた、終始。

・あ、あと、個人的に結婚したいぐらい大好きな毎熊さんは、とても良かった。あるシーンで見せるギバちゃんあご最高。毎熊さんは、すっごい悪い役をやりがちだったところから、最近は甘い男子や優しい男の役なども増えて来て、そしてこの先輩キャラね。どの毎熊克哉もすごくいいが今回の先輩もすごく良い笑。これ以上私の好きが放牧された状態だと私の中の好き好き羊が暴れ回るかと思います。牧羊犬助けてくれ。(羊飼いに関しては明るくは無いのであしからず)。気を付けて欲しいです。(誰が)
そして原田美枝子な…。大好きなのだよ原田美枝子。ミーハーで申し訳ないけど、「流れ星」からずっ…とファンです。電話の向こうの声からの初登場シーンからの、複数のシーンね。さっきまで色んな感情の影響で筋肉が忙しかった顔がいつのまにかダム決壊レベルでズブ濡れてて、普通に自分に引いた笑。
あの菅原家、全員大好きなんですけど…大好き。
ここまで来たので言うが、前田あっちゃんも中尾君も香里奈も野村周平も全員主役かい?ってぐらいまじで良かったよ。最高だったよ。

・ラストに進むにつれ、まさか、いや三浦大輔だからあり得るな…と思った。やっぱりそうだったけど、そりゃそうだろうとも思った。そりゃそーよ、皆そうなるで。
そして、これまで何でもなかった男女が、ほんとの男女の関係に人知れずなった事を匂わせるの、超うまいなとも思った。伏線は複数、見事に張ってたしね…うんまいなあ。

・途方に暮れるぐらい面白い映画だ、と心の中やらツイートやらストーリーやらで思ったり呟いたりする映画ファン達はごまんといるだろうから言っておきますが…。途方に暮れるぐらい面白い映画でした。(この歌も、旦那の母さんの影響でここ数年ヘビロテナンバーのひとつだったので、タイトルも音楽もだいすきです…)
今はもう、昨夜映画を観て、家に帰ってドラマ見てそば食べて寝て、起きて、移動中の電車内なのだが、この作品のエンドロールが過ぎてから今の今まで、未だ、製作陣とキャストの皆様への心の拍手はまだ鳴りやんでいません。

まつこ
まつこさんのコメント
2023年1月14日

humさん
愛していると言ってくれのトヨエツは永遠の国宝級俳優ですね◎
日本の宝です…!

まつこ
humさんのコメント
2023年1月14日

私も愛していると言ってくれの豊川さん大好きですー。声も、表情も、
後にも先にもないくらいのせつない雰囲気で満ちていて。

hum