「残念です…」あなたの番です 劇場版 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
残念です…
2019年にテレビドラマで話題となった「あなたの番です」。数多くの登場人物がみな曲者で、しかも何かを隠しているので全員怪しい。そして、回を重ねるごとに謎が深まり、頭の中がこんがらがる中、犯人を推理する楽しさが、この作品の最大の魅力でした。そんな人気ドラマの劇場版ということで、期待を高めて鑑賞してきました。
本作は、テレビ版のアナザーストーリーということで、死んでしまった人物も全員復活して、当時のキャストがそのまま再集結。そして、さっそく序盤から不穏な雰囲気が流れ、久々に味わう「あな番」らしい感じがファンにはたまりませんでした。マンション住民をさらっと紹介しながら、今回の舞台となる豪華客船での結婚パーティー、またもや第一被害者となる管理人さんの死まで、実にテンポよく描いています。
そして、ここから連続殺人へと発展して、犯人は誰だ、目的は何だとなるわけです。しかし、それがイマイチ盛り上がりません。おもしろくないというより、期待していたのと違う、なんとなく「あな番」らしくないという感じです。その原因は、もうどうしようもないことなのですが、尺の短さにあるように思います。
2時間余りの本作に、2クールに及ぶテレビ版キャストを総動員しただけでなく、新キャラの門脇麦さんまで投入したのは謎です。完全にキャラが大渋滞を起こしてます。そして、それぞれに十分な見せ場を用意できなかったため、怪しさを醸し出すことができず、結果として犯人を推理する考察場面も減り、ドラマ版にあった魅力が大きく削ぎ落とされてしまったように思います。これにより、真犯人が明らかになっても、やられた感が薄く、どこかスッキリしないものが残りました。
ストーリー自体は、初見でも十分に理解できます。また、テレビファン向けに、小ネタも多数仕込まれていたように思います。木村多江さんのハンドミキサーとか、坪倉由幸さんのゴルフバッグとか、ラストの原田知世さんの寝顔とか、テレビ版を思い出してニヤリとしました。それはそれで、観客への配慮は感じます。でも、ファンが求めていた、本質的な魅力が感じられなかったのは残念でした。