「みんなが褒め称える理由がよく分かった。」アメリカン・ユートピア 青空ぷらすさんの映画レビュー(感想・評価)
みんなが褒め称える理由がよく分かった。
Amazonレンタルで鑑賞。
「トーキング・ヘッズ」はギリ名前は知ってるかな?程度だし、デヴィッド・バーンも全然知らなかったので、「トーキング・ヘッズ」のデヴィッド・バーンのライブ映画と言われても「楽しめないかも」と、劇場で観るのは断念してしまった。
でも、今回Amazonレンタルで観て、その心配は杞憂だったし、ちゃんと音のいい映画館で観るべきだったと大後悔した。
冒頭、椅子に座って脳の模型を持ったおじいちゃんが、脳のアチコチを指さしながら「ここは記憶を○○する場所~♪」(歌詞が字幕で出る)とか歌い始めて、「え、え、何この歌!?」とビックリしてるうちに、どんどんライブ(というかブロードウェイのショーだけど)に引き込まれていく。
やがて、男女のダンサーと踊ってみたり、マーチングバンドみたいに肩から楽器を下げた人たちが登場して踊ったり縦横無尽に動き回ったりしながらショーが進んでいくんだけど、歌や演奏、二人のダンサーはともかく、デヴィッド・バーンのダンスはふかわりょうのネタみたい……ではないか、練習すれば子供でも出来そうな動きなんだけど、そのシンプルな動きも、ダンサーやバンドの皆さんの動きと組み合わさると見ごたえのある有機的な一つのダンスになっていくんだよね。
というか、本作のステージ構成は万事がそうで、デヴィッド・バーンの語りの部分も話し方や彼のキャラも相まって、最初は「学校で授業を聞いてるみたい」って思うけど、徐々にその語りがダンスや歌といったピースを繋いで一つの物語を紡ぐための糸だと分かる。
デヴィッド・バーンの歌詞も凄くシンプルなワードを使いながら、キラーワードで観客に問いかけてくるし、最初は割とシンプルだった音が、曲ごとに楽器が増えて厚みが増してステージがグルーブしていく。
で、それが極に達するのが、ブラック・ライブズ・マターを訴えるジャネール・モネイのプロテストソング「Hell You Talmbout」を全員で熱唱するシーンで、「一体何を言ってるんだ」という歌詞と、不当に命を奪われたアフリカ系アメリカ人たちの名前を連呼するという歌なんだけど、もうね、ステージの熱量にやられて号泣ですよ!
そうやって、このショーは最初は間接的に、徐々に直接的に「これでいいのか?」「考えろ!」って見てるコッチに迫ってくるんだよね。
いやー、返す返すも、劇場で観られなかったのが悔やまれる映画だった。