「いつまでも若いし、成熟している。」アメリカン・ユートピア shoheiさんの映画レビュー(感想・評価)
いつまでも若いし、成熟している。
デイヴィッド・バーンはトーキング・ヘッズやソロのアルバムを何枚か聴いた程度で、それほど強く好きだったわけでもないのだけれど、本当にセンスのある人だと思う。この映画はデイヴィッド・バーンによるブロードウェイのショーを、スパイク・リーが監督を務め映画化したものだが、69歳のデイヴィッド・バーンはすっかり白髪になっているけれど、声も若々しいし、舞台のパフォーマンスが活き活きとしている。コードやケーブルを舞台上から排除し、ワイヤレスの状態で、様々な国籍を持つ11人のミュージシャンやダンサーとともに、バーンは舞台上を縦横無尽に動き回り、様々な詩的な言葉を歌に盛り込んでいる。この言葉の一つ一つにセンスと熱量があり、同時に、彼の音楽同様、微妙な外し方の技法に満ちている。セットや衣装は地味なのに、11人のミュージシャンは縦横無尽な動き方に終始圧倒される。最後にかかったTalking Heads時代の名曲、”Road to Nowhere”は観客に混じっての演奏だったし、素晴らしかった。80年代に聴いていた頃の音楽とはまた違った、「成熟」を感じさせるものがある。じっと座って映画を観ていられる状態ではなく、体が自然とリズムをとってしまう映画。ジャネール・モネイのプロテストソング「Hell You Talmbout」でBLMを訴えたのも、厭味のない演出でよかったと思う。老若男女を問わず、是非多くの方に映画館で観てもらたいなと思った。
コメントする