劇場公開日 2021年5月28日

「ここにユートピアが在った」アメリカン・ユートピア エロくそチキンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ここにユートピアが在った

2021年5月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

これは驚愕のモニュメント。
まさに至福だった。

デイヴィッド・バーンの2019年秋にスタートしたというブロードウェイのショーをスパイク・リーが映画としてパッケージングした。

しかしこの完成度はいったい。

トーキング・ヘッズ時代の代表曲を織り込んだ構成はパーフェクト。そしてデイヴィッドを含む総勢12名のミュージシャンやダンサーたちがステージ上を動き回る姿は圧巻だ。計算され尽くしたフォーメーションの変化はホント凄いと思う。

もちろん音楽ありき。演奏のクオリティーが尋常でなかった。デイヴィッドのヴォーカルも衰えを知らない。緻密な振付があってのこのクオリティーは驚くばかり。

相当アドレナリンが出てたんだろうなぁ。

中盤の”Once in A Lifetime”で早くもイってしまう失態。ライブで一番聴きたい曲なので仕方なしか。
”Blind”から”Burning Down the House”になだれ込む怒涛のクライマックスで2回目の昇天。

椅子から立ち上がれないのはホント酷だった。
”Road to Nowhere”で一緒に歩きたかった。

これはデイヴィッド・バーンの集大成。音楽だけでなく、彼の思想、自虐的なインテリジェンスをもしっかり刻んだ。

反戦、反差別主義を貫いてきたデイヴィッド。この40年で理想の社会から更に遠のいたとさえ思えるアメリカだが、諦めることを知らない男だ。今作でも沈黙する有権者たちに、社会にしっかりコミットした。

やっぱカッコいいよ。

エロくそチキン