「音と照明に工夫が施されたミニマムなショーを特等席で!!」アメリカン・ユートピア 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
音と照明に工夫が施されたミニマムなショーを特等席で!!
印象はミニマリズム。グレーのスーツを着たパフォーマーが、各々ギターやキーボード、パーカッションを首から下げて、演奏し、歌いながら舞台を駆け巡る。派手な衣装もオーケストレーションも舞台装置もなし。なんとシンプルで美しいことか!?ミュージシャンで写真家でエッセイストでもあるデヴィッド・バーンが、ボーカルとギターとパーカッションと製作を兼任する伝説のショーの様子を、スパイク・リーが監督した本作。リーのカメラは客席側から、そして、舞台上からショーの全貌を映し出して、観客を特等席に座らせてくれる。こんなアングルからショーが見られたらどんなに楽しいだろう!?と思わせるのだ。上演された各国のメディアからは、そのあまりにも美しいサウンドについて、ライブではなく録音ではないかという疑問が湧き上がったというが、バーンはそれを真っ向から否定。だとしたら、これは踊りながら演奏することの可能性を広げた歴史的なパフォーマンスではないかと思う。また、スーツの肩のあたりに球体のような物が付いていて、照明はその球体を追いかけて移動する仕組みになっているのだとか。細部を知れば知るほど驚嘆してしまう舞台は、スコットランド出身でありながらアメリカの市民権を取得するほどアメリカを愛するバーンの、差別や暴力が絶えない母国へとエールと鎮魂歌の意味が濃厚だ。"アメリカン・ユートピア"というタイトルにはそんな意味が込められているのだ。設えはシンプルだが、中身は深淵。そして、楽しく愉快。何よりも、デヴィッド・バーン(69歳)の若さには驚く!
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