鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎のレビュー・感想・評価
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ダークな世界観が見ごたえあり
猟奇的なシーンがあるためPG12のレーティングが設定されている。「ゲゲゲの鬼太郎」はこれまでに何度もアニメ化されているが、基本的には子供が見ても楽しめるヒーローアニメだった。唯一異色だったのは、原作者である水木しげるが貸し本時代に描いた漫画をアニメ化した「墓場鬼太郎」くらいであろうか。本作はその「墓場鬼太郎」以来のダークで重苦しいテイストの作品になっている。ある意味で非常に野心的な作品だと言える。
物語は哭倉(なぐら)村を取材する記者を起点に、過去の回想が展開されるという入れ子構造になっている。
戦後間もない頃、村で起こった龍賀一族の遺産を巡る争いと、その背後に隠された陰謀が、主人公・水木の視点によってミステリアスに紐解かれていく。個人的には横溝正史の世界観、特に「犬神家の一族」を連想した。
尚、水木はその名前や帰還兵という設定から、原作者である水木しげるをモデルにしているものと思われる。水木しげるは太平洋戦争で左腕を失ったが、本作の水木は左耳の一部が欠損している。おそらくこれも水木しげるのオマージュだろう。
本作はそんな水木が主人公であるが、もう一人。彼と数奇な運命で行動を共にする謎の男・ゲゲ郎の活躍も見所である。誰が見ても分かるだろうが、彼こそ鬼太郎の父親その人である。特に中盤からクライマックスにかけては水木を凌ぐほどの存在感で、ドラマ的にもゲゲ郎の方に比重が置かれていくようになっていく。
水木とゲゲ郎、夫々のドラマを同時に追いかけていくことで映画全体の作りに若干バランスの悪さが目立つが、原作者を投影したキャラと、原作者が創り上げたキャラクターが同じ土俵の中で共闘するというメタ的なアイディアは秀逸である。ある種”異色”のバディ・ム―ビーとして見れば、これは中々面白いと思った。
また、この物語では”血”というものが大きな意味を持っているような気がした。
龍賀一族の醜い争いは血縁ゆえの悲劇であるし、水木が出征した戦争では多くの兵士たちが無駄な血を流した。血の怨念と言えばいいだろうか。無慈悲に命を散らしていった彼らの鎮魂。それがこのドラマには底流しているような気がした。
一方で、タイトルの「鬼太郎誕生」が見事に結実するラストが示すように”血”は生命の源とも言える。これにはかすかな希望も感じられた。
戦場で負傷した水木しげるは輸血処置が出来ずに左腕を切断するに至ったということである。この話を知ると、この物語における”血”の意味は更に重いものに感じられる。
全体的に非常に重厚なドラマでそつなく作られていると感じたが、1点だけ気になる箇所があったので付記したい。
それは沙代の最期のシーンにおける水木の立ち回り方である。その後にゲゲ郎の妻を助けに行かなければならないという事情は分かるのだが、それにしても随分とアッサリとしている。沙代は正に本作の悲劇のヒロインであり、思わず同情してしまいたくなるほどだったが、ここはもう少しジックリと見せて欲しかった。水木はさぞかし胸を痛めたはずである。その失意も冷めやらぬまま決戦に突入してしまった…という印象を持った。
謎はまだ解けない
評判が良いと聞いたので劇場へ足を運んだ。昔、白黒テレビでやってた頃に比べると鬼太郎とかキャラクターも洗練され絵もジブリや鬼滅なみに綺麗になっていて驚いた。鬼滅のオマージュ的な場面もあったし。ただ前から思っていたが猫娘は綺麗になり過ぎだったかなと。それはそれで良いのだが。(どっちなんだい)
内容的には好きな部類でかなり楽しめた。墓場の鬼太郎の前段としては上出来だと思う。
なかなかの良作
原作厨としては、完全な人間の味方である幽霊族は邪道よりのグレーゾーンたるも、
懐かしのジャパニーズホラーや、横溝正史ミステリを彷彿させる世界観、
今風のクリーチャーデザインや、バトルアクションをかけ合わせた良作で、
理解のある旧ファンも、第六期からみたファンも見ておいて損はない作品とおもいます。
少しグロテスクなシーンがあり、ほんとに12歳以上で大丈夫?って思いますが、
それ以外は◎。
いままででたエピソード0的作品はあまり良くない作品が多いものの、本作はとても良いと感じました。
グッズが一つも売ってなかった
テレビアニメと原作の墓場鬼太郎は、小学生の頃に見ていました。映画は、画像やキャラが綺麗と思いました。しかし、金田一耕助シリーズのような仄暗さや悍ましい感じが沢山しました。もう少し、明るい幸せな終わり方だったら良かったのにと思いました。
イケボまみれの犬神家
犬神家+八つ墓村な世界観をベースに進む、イケボまみれの妖怪奇譚。
こういう昭和の土着の因習みたいなものが根強く残っている世界観は素敵で、画もなかなか不気味なので印象的。
冒頭の血液銀行の社長室のカットなんかは特に劇的で、実写じゃ表現できないおぞましさ。
鬼太郎が好きな人にはたまらない空気感だったんじゃないか。
ストーリーは大まかに言えば、村の因習に立ち向かう二人の奇妙な協力関係だけど、そこにヒロインが噛んできたり、謎の殺人が続いたりで、面白い要素はたくさんある。
もっとも、多くのキャラクターがなぜか主人公にだけは甘く寛容なので、彼が自由に村を動き回れる理由や価値付けが欲しかった。
あとゲゲ郎については、行動原理が一貫していて分かりやすい分、もう一捻りあっても面白かったんじゃないか。(子供向け映画と考えればこのぐらいが丁度いいと思うけど、明らかに子供向けじゃない物語も入ってるので)
ラストはまあ、皆殺しエンドなので、鬼太郎誕生の暗さがより際立つ感じで印象的。原作知らない人には少々説明不足だけど、考えれば大体分かるのでそんなに気にならず。ただ、ヒロイン死亡後の主人公の立ち直りの早さは、さすがにちょっと許容できなかったけれども…。
そんなんで、総合的には楽しめたけれど、鬼太郎というよりは横溝正史だったので、あの雰囲気が好きな人ならより面白いと思う。
ただ、映像の美しさや不気味さ以外で、何かがすごく印象に残ったかというとそうでもなく、結局はイケボまみれの犬神家を見た感覚が近かった。声優さんの演技はみんなさすがだったし、特に主演二人はばっちりハマってたと思う。
あと、露骨なメッセージ性は不要かなと思ったけれど、子供向け映画と考えるなら、あったほうがいいのかも。その点も含めて、どの層がターゲットなのか分からない作品だった。
アニメで時間をかけてやってほしかった
母がアニメ1~2期&墓場時代のファンで、私自身も幼い頃からゲゲゲの鬼太郎は身近な作品だと感じています。
SNSでの話題性が凄く、2次創作もかなりの数出ており物凄く期待値が高かった中で、友人に誘われて鑑賞しました。
特典とパンフレットが売り切れとのことで(鑑賞した日の午後に特典増刷と聞き崩れ落ちました笑)残念に思いつつも、エヴァQのキャラデザ担当の方が今作のキャラデザをしていたのもあり、ビジュアルの良いバディの様々な面が見られるのを楽しみにしていました。
冒頭からアニメ6期の鬼太郎と猫娘、それを追う廃刊寸前の雑誌記者が出てきて、目玉おやじが謎の島を見ながら懐古する形でストーリーが進みます。
昭和の高度経済成長期に差し掛かった辺りの日本で、血液銀行勤めの水木が秘薬の謎を探りに来た因習蔓延る村が本作の舞台となります。
…ここだけでもかなりよくあるミステリー物の印象が強いです。
この後、水木は移動の列車内で出会った謎の白髪の男(=ゲゲ郎)と村で再開し、村の異常さと妖怪の存在を余すことなく知り、双方の利害が一致しバディを組んで本作の怪奇や黒幕に対峙する…のですが、序盤から最後までかなり色々な場面の説明が端折られて展開が急なところが多く、どこに感情を置けばいいのか迷子になりました。
(劇場パンフレットや特典の内容を見ることができていれば、もう少し展開に納得できていたのかもしれません)
悪そうな見た目の人間はみんなバタバタ退場していき、作中唯一の美女もぶっ壊れて退場します。
ゲゲ郎は(他の方もレビューに書いていましたが)中級ボスまでは難なくあしらうのですが、パワーアップした狂骨となると手に負えないらしく軽やかにやられます。
水木は感情が不安定で、(元々の人を軽んじる性格は置いておいても)物凄く苦しんだり立ち直れないほど悲しんだかと思えば次のシーンではもう立ち直ります。
モブはもちろん重要人物も女子ども関係無しに皆退場するので、(本作はハッピーエンドという感想が多いですが)個人的にはハピエンでもバトエンでもないかなと感じました。
特に残念な点を上げるとすると(全体的なストーリーの端折りすぎな所は勿論なのですが)、終盤の黒幕の風貌と、桜の泉の淵で倒れた水木の後方で黒幕と話すゲゲ郎のシーンは、対比がどこかギャグ物を見ている風に感じてシリアスなシーンなのに話が入ってこなかったです…
ゲゲ郎がご先祖パワーに圧倒されるシーンも、(勿論ご都合主義なのは念頭に置いても)一歩間違えると展開に置いて行かれているように見えてシュールでした。
全体的なストーリーは金田一耕助シリーズをベースに、退場シーンは地獄少女を加え、そこにゲゲゲの鬼太郎要素で蓋をして、呪術廻戦とFateでアクションする感じでした。
水木しげる先生の生誕100周年の記念制作なので仕方のないことですが、もし放映時期が呪術0よりも前であればチラつかなかったんだろうなぁと…
2次創作の盛り上がり通りビジュアルと声優、それを取り巻く因習村という設定は確かにとっつきやすく、それ目的で観る場合は期待通りだと思います。
ただ、一部の過剰な盛り上がり方とは違い、そこまで(というより話題になるような箇所以外には)サービス(?)カット等があるわけではないので、初見時は期待値を上げないほうが楽しめると思います。
SNSでおすすめされているような過去関連回を履修してから…というのもそこまで気にしなくて大丈夫です。むしろ鬼太郎を知らない方は本作を見てからおすすめ回を見る方が整理がつくと思います。
ねずみ男は終始お調子者で安定しているので今作の最重要癒し枠です。出てくれてありがとう…
シナリオ面はありきたり設定に落とし込んでしまっているので、これをもっと丁寧にもう少し尺をかければきっと面白かっただろうな〜と惜しいものを見た気分でいっぱいです。アニメで時間をもう少しかける等してやってほしかった…
鬼太郎誕生という題名通り、エンドロール中〜後に鬼太郎が誕生したところで物語の99%が終わります。冒頭の記者が残り1%です。
あのタイミングで終劇→劇場が明るくなるとは思わず、少しびっくりしました笑
映像の綺麗さや、ゲゲ郎や味方する妖怪たちの惹かれるキャラクター性はとても良く、そして今作の勢いで鬼太郎関連の盛り上がりは勿論、深大寺の鬼太郎茶屋も物凄い盛り上がりを見せており、元々鬼太郎が好きだったので年末に盛況ぶりを感じられてそこも良かったです。
私も久々に深大寺に行きたくなりました。
テーマに家族愛人種差別反戦を感じました
エンドロール後にタイトルが出てきて、「うわぁ〜!始まった〜〜!!」と興奮しました。詳しいレビューは他の方に譲ります。
数あるミステリー物と比較して、本当に個人意見ですが伏線と回収がスッキリ分かりやすくて面白いです。アニメーションの動きが、これまで培ってきた技術総動員のように思えます。
皮肉にも、戦争があったからこそ素晴らしい作品がうまれるものですね……。(2023秋冬はなぜこうもWWⅡ関連が多いのか。)
失われていい種族って本当は無いはずと感じました。鑑賞後は興奮と同時に「お父ちゃんお母ちゃん……!!!!」という感情。そして、血気盛んによい国を作ろうとして作り上げた世代と現在のことを思うと言葉に出来ない感情が同時に現れます。
複数回観ると物語の理解と登場人物の心境や背景が分かりもっと面白いです。ありがとうゲゲゲの謎。
佐平翁ならぬ、時貞翁
墓場鬼太郎の内容を含んだ映画ということで見に行ったら、めちゃくちゃ横溝正史的な世界に描かれていて、笑ってしまった。
当主の死後、弁護士らしき男が遺言書を読み上げるシーンなんて、まさに犬神家の一族そのもの。
舞台になっている村も湖があったり、屋敷もそれとなく犬神チックというw
さらに、近親○○的な要素も、横溝正史が描いた田舎の閉鎖的世界そのもの。
でも、その中に、確実に妖怪というものが絡んでいて、そこは確実に鬼太郎の世界だった。
ただ、作画のパースやカットの繋がりなど、微妙なとこもあったので、その辺はいただけなかったので、ちょっと低めの点数になってしまいました。
エンディングに原作の話を持ってくるのはいいけど、最後に原作の話をそのまま持ってきても、本編の話と繋がっていないので、違和感が出てくるのも、マイナス要素にしました。
剛腕や気合
途中、ん?と思わせる箇所はあるけれど完全にもっていかれた。
105分という上映時間で、伝えたいメッセージを下敷きに娯楽作としての魅力を出しつつ、過去の映画作品を参考にしながら新しい価値を創造できている。
監督はじめスタッフたちの剛腕や気合のようなものを強く感じた。
いわゆる声優演技というものが好きではない。
かといって宮崎作品のように俳優・役者を並べるのもどうなんだと思っている。
そんな自分に、今作鬼太郎の父を演じた関俊彦はささった。
ふだんアニメをみている人間ではないので、こういう作品に出会えたことがうれしい。
先に見た人たちが話題にあげてくれたことに感謝したい。
水木と目玉の親父のバディは発明
水木と目玉の親父のバディは発明だと思いました。特に作者本人からディティールを頂戴した水木の薄暗いリアリティと好漢ぶりは、この映画を支えていると言っても過言ではありません
演出、カットも冴えており、観客を画面に集中させる事が出来ています。しかし中盤以降、因習村の解決編があまりにも力業で興を削いでしまったのと、水木が活躍しているとは言い難い(おおむね超常の力で解決されてしまう)のが気になりました。因習村が神秘のベールに包まれている間は面白かったですね
またリアリティラインや演出の温度感の不統一が気になります。「墓場鬼太郎と日朝鬼太郎の両取り」を目指してどっちつかずになったような感じです。ホラー演出が効果的だったのも主に中盤まで、ストーリーが日曜の朝番組テイストになってからはいつもの鬼太郎です。お話の上では特に重要ではありませんでしたが、8等身の猫娘は(その存在を知っていたにも関わらず)登場する度に笑ってしまいました
鬼太郎に似た男の物語
これは鬼太郎映画ではない。ダーク調な作品。
鬼太郎に似た男と雑誌記者?(ちょっとうる覚え)のとある村での出来事ってだけの話。
結果的に目玉の親父の目玉だけになる前の鬼太郎風貌時の話なんだが。目玉だけの目玉親父との関連性がほぼほぼないから、ゲゲゲの鬼太郎感が全く無い映画になっている。
鬼太郎誕生の部分は最後のエンドロールでチラッとあるだけ。
本当に鬼太郎誕生の部分に時間を沢山使って丁寧に描いて欲しかった。
鬼太郎の母親と父親(目玉親父)の馴れ初め辺りも一辺倒な説明だけだったし。
もっと「ゲゲゲの鬼太郎」の世界観が欲しかった。
作中唯一絡んでいたのが子供時代のネズミ男だけ。
お馴染みの鬼太郎ファミリーの妖怪たちも登場すれば良いのに。
砂掛けババや子泣きジジイなんてさらっと登場させても良いのでは。何なら猫娘の両親とかの絡みとかあったら面白いのに。
鬼太郎の誕生感は殆ど無かった。
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久しぶりに映画館で鑑賞
鬼太郎映画を観る直前に「ゴジラ-1.0」を観た後での感想です。
鬼太郎映画でモヤモヤした後に「君たちはどう生きるか」を観たらもっとモヤモヤすることに。
1日3作はちと辛い。
5か4.5で迷う作品
目玉の親父がめちゃくちゃ活躍してます。数十年前、鬼太郎誕生の漫画を見たことがありますが、「こんなんだったけ」と少し戸惑いましたが、とてもいい映画に仕上がっています。何度も見るときっと一つ一つに意味がある事に気づくと思います。鬼太郎の若き日のお父さんの声は、関俊彦さんが担当しているので、鬼滅の刃の鬼舞辻󠄀無惨を思い出してしまいましたが、重厚でとても素晴らしい演技でした。声優さん達の技術に感服しました。
墓場とゲゲゲの最高の融合。鬼太郎史上最高の大傑作。
犬神家的な昭和の名家の相続を舞台。
犬神家的な昭和の闇、クトゥルフ神話TRPG的な知ってはいけない秘密に近づくスリル、墓場の鬼太郎の不気味さ、ゲゲゲの鬼太郎のヒーロー展開。そのすべてを味わえる傑作です。
まず昭和の闇を魅せるミステリーとサスペンスが凄い。そして妖怪が実にいいアクセントになっている。
キャラも素晴らしい。若き日の目玉の親父もかっこいいし、パートナーの水木もとてもいい。ヒロインの紗代もその他龍加一族もみんないい。
そこに秘められた謎もいいし、謎の明かされ方もとてもいい。クトゥルフ神話TRPGリスペクトを感じる。
そしてそれらの絶望の果に鬼太郎が誕生に繋がるのもいい。こうやって繋がるのかあととても感動した。
墓場の鬼太郎の不気味さを漂わせつつ、ゲゲゲの鬼太郎的ヒーロー展開で爽快感もある。唯一無二の作品だと思う。
いま鬼太郎が好きな人、昔鬼太郎が好きだった人、昭和サスペンスが好きな人、ホラーが好きな人は絶対見たほうがいいです。
東映の良心ともいえる傑作アニメだった
冒頭犬神家が出てきて、大体のあらすじは読めてしまったが、それでも脚本がよく練られており、見事に現代日本を風刺して良かった。
また、クライマックスに天下国家を語ってた奴が命乞いに、主人公に会社の社長になって御殿に住んで運転手付きの車に乗れると持ちかけるが、それに対してつまらんと言った時は痛快だった。
おそらく主人公はあの時自分の憧れたものの正体、空虚さに嫌気が差したのだと思う。
上映後子どもたちが「地味だな映画だなあ」と言ってた。
たしかにこの映画の素晴らしさがわかるのは大人だけかもしれない‥。
現代日本の歯車になって地を這っている庶民からしたらとても考えさせられる映画なのだが‥
10年経ったらまた見返してほしい。
彼らが同じ感想を抱くならその時の日本は良くなっていると思う。
鬼太郎誕生の原点に涙!
最初目を引いたのはねこ娘でした。とっても可愛くなっているような気がして見惚れました。私は何の予備知識もなく観に行きましたが、水木の人生観の深い部分の輝きを見たようで、膝を打ちたくなるほど感銘いたしました。つまり鬼太郎が主役ではなく、鬼太郎が生まれるまでの水木の戦いが鮮烈に描かれていたのでした。だから子供向けと言うよりは、意識の高い人向けかもしれません。友人からパンフレットの購入を依頼されましたが、あっという間の完売だったと店員さが言っていましたから、そのパンフレットの中身ですら、かなりのレベルの高さと想像できます。私は後半も最後の方になって目玉親父が誰であり、お墓の中から出てきた赤ん坊が鬼太郎だと言うことに気づくのが遅いほど鈍感でしたが、全ての相関図がわかった時の感動は、言葉で言い表せないほど強い波のようでした。最初に鬼太郎が「お母さん」と呼んだ意味も回収できました。金の亡者であった龍賀一族は、まるで混乱する戦後の時代につけ込んで、富を貪る餓鬼のような存在でした。その金の亡者に対して徹底抗戦する目玉おやじと水木は、人間性を失わない真っ当な日本人の鏡のようで清々しいです。そして、そこに生まれた鬼太郎は、ある意味日本の希望なのかもしれません(大袈裟かな?)。日本人だからこそ創作できた傑作と言えるかもしれません。
追記 水木の軍隊で受けた残酷な仕打ちや失望感も学ぶところ多し。
【※長文愚痴】圧巻の映像美と声優の演技、そしてチープなテーマと悪役にお説教
大前提として、私はもともと『妖怪がひたすら被害者という立場を通して現代人の物質主義やエゴに物申す』というスタンスの鬼太郎アニメがそこまで好きではないタイプの子どもでした。今でも鬼太郎ほとんど興味ない人間です。
が、あまりにも評判がいいのと、PV映像がめちゃくちゃカッコいいので面白そうと思って見に行きました。
PVどおり映像はホントよかったです。特に莫大な手間とお金かけたであろうアクションシーンは圧巻の一言だし、声優さんも素晴らしい。一番好きだったのは沙代を演じた声優さん、可愛らしい声だけど今時の萌え系アニメのアイドル声優とは厚みが違うなあと感じました。
ただ、ストーリーのほうは…、PG12と言うことで、もう少し大人の鑑賞にも耐えうる深みや骨太さがあるのかと思いましたが、結局悪くて醜いのは全部人間なんです、人外の存在はあくまで被害者なんです!っていう、もう鬼太郎じゃなくても百万遍は見た食傷気味のパターンで、アニメとか漫画見なくなって久しかったけどマジで今でもコレやっちゃうのか、とちょっと鼻白むくらいでした。
この手の批判や説教はテレビアニメの鬼太郎の中でも子どもの頃何度も見せられたものですが、じゃあふわふわな感情論以外で、具体的にどうすんの?っていう答えは一度も見た覚えがないんですよね…出てたら教えて下さい。ただダメだエゴだと批判と精神論的な解決案繰り返すだけなら子どもでも出来ると思うので。
そして色んな創作物で腐るほど見たやつ、巨悪の象徴にして世界でも類を見ない圧倒的謎技術を誇る旧日本軍。そいつらがヤバいお薬作って、それで生産したジャンキーを駒に、日清日露戦争を勝っちゃってます。チョロい戦争ですね。
横溝でも確かそんな話ありましたが、たかがジャンキー使った程度で強国に勝てちゃいました、その後の世界大戦もいいとこまで行けちゃいましたとか、そんなガバガバでボロボロなツッコミどころしかないネタ昭和ならともかく、この令和でも真面目に大々的にやってるのがまず驚きです。猫娘とかめちゃくちゃ今風に寄せてるのに、そういう穴だらけのとこは一切アップデートしないんだ…
しかも敗戦直後の急激な復興もそのおクスリの影響とかいう、当時の過酷な状況下で働き抜いたであろう人々への冒涜とも取れる描写は、真面目に閉口しました。
とにかくそのへんの全ては戦争(というか日本政府と旧日本軍)が悪なんです!と言いたいがための設定なので、薄いし、説得力なんてないと感じます。
戦争批判の部分なんて、何か軍隊時代の水木の上官が『玉砕って言っちゃったから俺以外は玉砕しなきゃだし…』みたいな信じられないアホだったり、壮絶な後輩イビリする先輩がいて、それらをして水木は「俺は戦争の理不尽さ悲惨さを知ったんだ!」みたいな感じにもなってますが。確かに上司ガチャハズレは理不尽だしご愁傷様としか。でもガチャに外れたのも上司がアホなのも戦争とは別の理不尽さだと思う…いじめ問題も別に軍隊や戦時下に限った話でも全然ないし。その辺の問題を戦争と完全に混同しているのがかなりチグハグに思えます。やり尽くされて来た語り口ではありますが。
あと「戦争は全部それを煽って食い物にしてる黒幕の仕業で、一企業の勤め人だけど俺そういうの全部見えてるし分かってます!」みたいにもなってる。
それを、何か説得力のある具体的なエピソードで魅せてくれるわけでもなく、ほぼ全部セリフでズラズラ言ってるだけなので余計に寒いし薄っぺらいです。
そして戦争の悲惨さを訴える割に、日本側の醜悪さだけはギャグレベルにまで誇張して執拗に描くくせに、爆薬ぶっ放して人間粉々にしてくる敵の事には一切触れないし見えてこないの何なんですかね…それこそ幽霊や妖怪じみてるんですが
アクションはとにかく素晴らしいですが、それを向ける悪の存在が、ガバガバ設定の旧日本軍や巨大企業に象徴される、単純かつ申し訳ないですが幼稚で古臭い二元論や戦争観を下敷きにしたものなのでシラけました。
戦争云々置いといても、悪役は全部自分の悪事ベラベラ喋って調子乗る系だし、これで人間のエゴや醜さが描かれてますって言うなら、それ水戸黄門見て人間の複雑さが描かれてる!って言うようなもんでは…
小学生くらいまでならエンターテイメントとしてアリでも、PG12…一応大人も見るものでこの悪役、この悪の描かれ方はない…。
最後はお約束の、「豊かになっても相変わらず人の心は貧しい」みたいなお説教で締めくくってますが。そういうお説教を贅を尽くした劇場用アニメーションで流せて、それに対して10億単位の金を現代の観客が落とせるのも、あの戦争を戦い抜き、そして戦後身を粉にして働き復興してきた名も無い人々がいればこそで。そこに何の感謝もなく、ただ上から目線で愚かだった、身勝手だったとしか言えない、感じられないのなら、確かに心は貧しいかもねと思いました。
そういう意味では、メッセージ性が強く心に残る映画ではあります。
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