劇場公開日 2023年11月17日

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「何を受け取るか」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5何を受け取るか

2024年5月1日
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鑑賞方法:VOD

ただ暗闇が怖かった子ども時代。
自分にとって鬼太郎に出てくる妖怪たちは、その恐怖を具体的な形として示してくれるものだった。
世代を超えて今でも鬼太郎が愛されるのは、その時代に合わせた表現を用いながら、そうした得体の知れないものへの恐れを、もののけや妖怪に表してきた「日本の風土」が、我々の中に普遍性を兼ね備えて共有されているからだろう。

今作は、もはや戦後ではないという言葉が流行語になった、高度経済成長前の昭和31年。
そこに、王道の人里離れた謎の村を舞台にもってきた。これも、多くの日本人が共有する世界観だ。

それゆえに、物語はわかりやすく、絶対的な権力者のもと、外部からは伺い知れない因習によって動いている不気味な村の恐怖は、表現されている。

ただ、バランスが難しいと思うのだが、わかりやすさと引き換えに待ち構えているのは、ステレオタイプの罠。
出てくる人物たちが、みんないかにもな傾向は気になった。
共有イメージに託し過ぎて、セリフも表面的だった印象が否めない。

まあ、個人的な私利私欲を、国家や大義を口にして正当化する輩は、戦中戦後に限らず、今もうじゃうじゃいるので、そこはリアルなのかもしれないが。

自分が一番心に刺さったのは、ゲゲ助の「生まれてくる子どものために」というセリフ。

ただし、狂信的な差別者たちも、よくこの言葉を口にすることも忘れてはいけない。

あそこに描かれていた村人一人一人にも、生活があり、決してまとめて切り捨てられる対象ではない。
力を持たないものは、蹂躙されても仕方がないという刷り込みを無意識のうちに受け取らないことも大切にしたい。
水木しげるが、ずっと訴えてきたのは、そういう理不尽さだと思うので。

sow_miya
かばこさんのコメント
2024年5月1日

共感をありがとうございます。
sow_miyaさんのレビュー、共感しまくりです。

>力を持たないものは、蹂躙されても仕方がないという刷り込みを無意識のうちに受け取らないことも大切にしたい。

とても鋭い気づきです、仰るとおりです。
力あるもの側だけでなく、力のないもの自身がその刷り込みを肯定する限り、いつまで経っても奴隷のままです。

かばこ