「イケボまみれの犬神家」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 klopstockさんの映画レビュー(感想・評価)
イケボまみれの犬神家
犬神家+八つ墓村な世界観をベースに進む、イケボまみれの妖怪奇譚。
こういう昭和の土着の因習みたいなものが根強く残っている世界観は素敵で、画もなかなか不気味なので印象的。
冒頭の血液銀行の社長室のカットなんかは特に劇的で、実写じゃ表現できないおぞましさ。
鬼太郎が好きな人にはたまらない空気感だったんじゃないか。
ストーリーは大まかに言えば、村の因習に立ち向かう二人の奇妙な協力関係だけど、そこにヒロインが噛んできたり、謎の殺人が続いたりで、面白い要素はたくさんある。
もっとも、多くのキャラクターがなぜか主人公にだけは甘く寛容なので、彼が自由に村を動き回れる理由や価値付けが欲しかった。
あとゲゲ郎については、行動原理が一貫していて分かりやすい分、もう一捻りあっても面白かったんじゃないか。(子供向け映画と考えればこのぐらいが丁度いいと思うけど、明らかに子供向けじゃない物語も入ってるので)
ラストはまあ、皆殺しエンドなので、鬼太郎誕生の暗さがより際立つ感じで印象的。原作知らない人には少々説明不足だけど、考えれば大体分かるのでそんなに気にならず。ただ、ヒロイン死亡後の主人公の立ち直りの早さは、さすがにちょっと許容できなかったけれども…。
そんなんで、総合的には楽しめたけれど、鬼太郎というよりは横溝正史だったので、あの雰囲気が好きな人ならより面白いと思う。
ただ、映像の美しさや不気味さ以外で、何かがすごく印象に残ったかというとそうでもなく、結局はイケボまみれの犬神家を見た感覚が近かった。声優さんの演技はみんなさすがだったし、特に主演二人はばっちりハマってたと思う。
あと、露骨なメッセージ性は不要かなと思ったけれど、子供向け映画と考えるなら、あったほうがいいのかも。その点も含めて、どの層がターゲットなのか分からない作品だった。