劇場公開日 2023年11月17日

「堅実に面白かった」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 思いついたら変えますさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5堅実に面白かった

2023年12月7日
PCから投稿

ホラーもしくはサスペンスとしてはすごい古典的なロジックの詰め合わせで、ジャンルとしての新鮮さはそこまででもないものの、その詰め合わせ方でガタガタになりそうなものを手堅く綺麗に纏めあげてきた好編。
まず何は置いて親父さんが注目になると思うが、これが意外なほどすんなり心に入ってくる。事前情報だけだと「ゲゲ郎ぉ〜?もっと捻れや...わっかりやすい美形化商売じゃのぉ( ゚д゚)、ケッ」ぐらい斜に構えて入ったわけだけど、声も姿も馴染みのそれと違えど、言動や考え方が的確に捉えられていれば「あ、コイツ目玉親父じゃん!」ってちゃんと思える。それが何とも不思議に快感なのである。そうなると中盤から挟まれる霊力バトルも身が入って観れる。STARWARSで若い頃のヨーダが初めて宙返りした時と似た感触の感動があった。つうかそれ差し引いても関俊彦の男前と奇っ怪と老齢を反復横跳びする見事な声使いには参ったよ。

序盤は...というか根幹はかなり年長の観客を意識したつくりで、語り口も文学じみてJホラーな世界観に引き込まれる。完全に旧世代ファンの年頃向け...というよりは、最年少格のゲゲゲ6期世代もいい塩梅に成長したので、全員こういう温度で見せられる頃合いということかも(元々6期は別の角度で攻めたホラーだったけどね)。ていうか特に舞台である村に入った瞬間の風景、音なども含めて見せ方がいちいち上手い...「映画ってこうよな」という心地良さのつるべ打ち。やっぱ遠景の鳥居って言い知れぬキモさあるよね...(語弊)。

水木先生の御生誕100周年ということで、先生のもうひとつの大仕事であった「戦中の負の顔」が主人公の記憶としてインサートされる。ストーリーの謎に直接絡むと言うよりは、観客にしてみれば馴染み深くない(であろう)主人公の厚み部分ならびに、感情を鈍らすのにも激高させるのにも作用している要素なので、無理くり入れた感はなくちゃんと通しで意味がある趣向だ。

シックな往年の実写映画的な見せ方に慣れた所から、怪異的な要素が飛び出た辺りで急激にいつもの妖怪ヒーロー物の雰囲気がオーバーラップしてきて「あ、そうだこの映画ゲゲゲだった!!」ってなる。東映アニメーションでも調子のいい時の作画でギュンギュンのカランコロンに猛スピードアクションが入り、まどろんだ脳が一気に目覚めるのでありがたい。単純にかっこいいし。狂骨のデザインはあんまり好みじゃないけど。

謎解きものなのであまり核心は語らないことにして、うるさくない程度に品よくファンサもあり、納得いく真相、見事な決戦、そして家族(幽霊族)愛。意外とちょくちょく本気出すグロ要素を除けば老若問わず観れる堅実な仕上がりと言えるのではないか。僕はゲゲゲでいうと4期の大ファンなんだけどすんなり楽しめたし、どの世代だから受け付けない...という内容ではないんじゃないかなと個人的には。強いて言うならそれこそ題通り鬼太郎誕生にかかってくる話なので、深夜アニメにもなった「墓場鬼太郎」が気に入ってる人は特にオススメかと。

思いついたら変えます