「創造」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
創造
鬼太郎シリーズはテレビでやってたものを見ていた程度ですが、今作はPG12指定になってエグさ全開になってると効いたので、これは観に行かなきゃなと思い鑑賞。特典はビジュアルカードでした。
最初は和製ミステリー、中盤からはホラーとグロテスクの応酬、最終的には悪しき文化への絶望と微かな未来への希望が描かれており、今までの鬼太郎とは一線を画す作品に仕上がっており、年齢を重ねた今だからこそぶっ刺さるものになっていました。
裕福な暮らしを求めるため、付き合いのある社長が領主になるかもという情報頼りに哭倉村へとやってきた水木、そこで事件に巻き込まれるが、それには村の文化が関係していて…といった感じのあらすじです。
村で次期領主が殺されたタイミングでやってきた謎の男、名前を名乗らないのでゲゲ郎と呼んでおり、のちの目玉おやじという事が観てる側には分かっていますが、作中の人々はそんなことは知らないのであまり良くない目で見ているのが印象的でした。
最初は互いを信用していない、それどころか互いに人間を信用していなかったゲゲ郎と水木、そんな2人が酒を飲み、タバコを吸い、腹の内を割って話していく内に相棒になっていく過程も推理ものでたる真相に近づく感じがあってとても好みでした。
途中挟まれるアクションシーンが素晴らしくて、ゲゲ郎の身体能力の高さにも目を見張るものがありましたが、一騎当千の如く次々とやってくる敵でさえ全て薙ぎ払い、その場にあるものを全て武器に変えていくスタイルがカッコよかったです。アクションシーンが特別多くない作品だからこそ、このシーンの作画の滑らかさは際立っていました。
展開が一つ進むごとに一族の誰かが殺されるのですが、殺し方が中々にエグくて、PG12指定でもギリギリなんじゃないかってくらいのレベルでした。
時麿は時貞が沙代に体を求めていた事と同じような事をしようとして、妖怪に目玉を貫かれて死にましたし、丙江は時貞と沙代の事を報告しようとしたら、妖怪に連れ去られ、そのまま尖った気に体ごとグサリ、ここでも烏に目玉が食いとられるという刺激的なシーンがありました。
康子は書物をあさっていた沙代を脅したら、首ごと掻っ切られ、そのまま祀られるような状態で死んでいたりと見る人によっては気持ち悪くなるんじゃないかむてレベルにはエグかったです。
図らずしも、鬼太郎や水木たちが助かるはずのシーンでもその惨さは続いていき、部下たちは焼かれ切られのやられ放題、抗った幻治も体を切り刻まれ、乙米は目からパイプで体ごと貫かれ、そのパイプの先端から目玉だけ飛び出て大量出血…もうここら辺は唖然としながら見ていました。
村で時貞がやりたい放題だった事が終盤明かされ、沙代との間に遺伝子を残すために近親相姦をはたらいていたり、時弥の体に魂ごと乗り移って、時弥は地獄の底へ…。妖怪たちの血を「M」という薬品に改良しビジネスとして動かしている裏で、妖怪たちは干からびて息絶えているといった残虐な状態で、それを高らかに笑う時貞はほんまもんの悪でした。
金こそが正義、権力こそが正義と謳う時貞に向かって、お前の人生はつまらないとはっきり言い切って時貞を永遠の痛みに封じ込める事に成功した水木と下下郎の表情は少しだけ明るくなっていました。
少し残念だったのが、最終的に妖怪が巨大化しての決戦になってしまったところです。盛り上がってはいましたし、見応えも十分あったのですが、安易に巨大化しちゃったかーと思ってしまいました。
現世への扉を開いてしまったが最後、閉じ込められていた妖怪たちが村へと飛び出していき、村人を焼き尽くし、考三は克典の乗る車に轢かれ、克典はそのままクラッシュして血まみれに…。外から来たゲゲ郎たちは無事で、悪しき習慣を黙っていた村の人間は1人残らず死ぬという容赦のない描き方でした。
大人子供女男なんて関係なく殺していくので、現代では珍しい平等に殺していくというスタイルは痺れました。
ラストシーン、生まれてきた鬼太郎を抱きしめる水木。怨念を全て受け入れて目玉おやじの姿になったゲゲ郎、彼らが生きる未来を"見てみたくなった"という締め方が姿や感情も相まってジーンとくる終わり方になっていました。
声優陣は全員本職、だからこその喜怒哀楽にダークな世界観が完璧に表現されており、1シーン1シーン毎に感情が突き動かされていました。
ミステリーとホラーの完璧な融合、戦争や人間の愚かさを余す事なく描き、妖怪という存在の脅威をこれでもかと示した傑作でした。
偶然にも戦後の日本が舞台だった「ゴジラ-1.0」と同じく残された者の物語というのもまた良くて、この時代をメインに据えた映画が今後増えていくんだろうなと思いました。当時の事を知らない自分が、こうして作品を通して見識を深められる事が喜ばしい限りです。
鑑賞日 11/21
鑑賞時間 12:00〜13:55
座席 A-1
各シーンから引き出された率直な感情を反映なさったレビュー、良いですね!
〉その場にあるものをすべて武器に変えていくスタイル
仮面ライダー1号・本郷猛が浮かびました。(本郷さんはその場にあるものを武器に変えるというよりは、いつのまにか敵の武器を奪っているスタイルなんですがw
ま、徒手空拳から武器を生み出すって事で)
フォロバさせて頂きますね。
また共感作にて宜しくお願い致します。