「鬼太郎に込められた水木しげるの思い」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 bionさんの映画レビュー(感想・評価)
鬼太郎に込められた水木しげるの思い
想像以上にダークでヘヴィーなテイストに驚いた。
都会の人間が、閉ざされた秘境に足を踏み入れ、そこで得体の知れない何かを体験する。『ウィッカーマン』や『ミッドサマー』の系譜と同じく、哭倉村に足を踏み入れた水木が、村の奇祭・奇習を目にしたことによって運命を狂わされる。
さらに鬼太郎の父親が村にやってきたことによって、龍賀一族の秘密と幽霊族の因縁が解き明かされていく。
この物語を借りて、太平洋戦争中に行われた日本軍の愚行や、戦後のどさくさで軍の財産を横取りした将校たちの所業も語られる。指揮官のメンツのために玉砕的突撃を強いられ、奇跡的に生還して血液銀行に勤める水木は、戦争で片腕を失った水木しげるそのものであり、仲間を失ったトラウマに苛まれる。
おどろおどろしさだけではなく、龍賀一族に起きる連続殺人事件を追いかけるミステリーでもある。悲劇的な結末に向かっているとしか思えない運命に胸を締め付けられる。
今までにない、大人向けの鬼太郎でございました。
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