「今だからこそ見るべき映画」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 まさはるさんの映画レビュー(感想・評価)
今だからこそ見るべき映画
原作墓場鬼太郎の要素を入れつつ、戦後の話なのに現代人にも伝わるようなメッセージ性を含んでいて、映画鬼太郎作品としてこれほど完璧な作品を出してくるとは思わず、ある意味で圧倒された。Netflixの悪魔くんにここから繋がっていくと気付いたときは鳥肌が立った。
この映画は、よくある妖怪がめちゃくちゃ出てきて妖怪大戦争!ではなく、ただじっとりと弱火で煮られるような醜悪、憎悪、憎しみ悲しみが混ざり、人間とは?生きるとは?という水木しげる大先生の考え方などの本質的な部分にもしっかりと踏み込んでおり、ストーリーとしては大変満足した。
作画においては中盤アクションシーンも今までの鬼太郎にはない、グネグネとした線で素早さと奇妙さを掛け合わせたような不思議なのに力強いモブサイコのようなアクションシーン描画が素晴らしい、ここを見るだけで2000円の価値があると言っても過言ではない。最後の戦闘はちょっとドラゴンボールっぽい作画だが、それはそれでラストバトルにふさわしい迫力があって良かった。
細かい部分ではゲゲ郎が船を漕いでいるシーンで水木しげるっぽい作画の顔をしているのも良く、作画スタッフがいかに細部にまでこだわって作画していたかがよく分かった。
序盤から流れる夏のじっとりした田舎風景もすごくリアルで、今もしかして夏だったか?と思わせるような音響も素晴らしい。
もっと細かい部分だが、原作墓場鬼太郎で鬼太郎が吸っているタバコがピースだ。それを水木が吸っていることに細かな鬼太郎造形を感じて大変興奮してしまった。
そこから推察すると、6期猫娘があの等身になったのも、墓場鬼太郎のリスペクトからなのか?という推測を立ててしまうのだが、製作陣が狙ってやったかは不明である。
作画は全体的に綺麗で、作画崩壊している箇所がほとんど無いように感じられた。ここは逆に度肝を抜かれた。
人間は愚かだが、最後のエンドロールまで見ると、愚かだが慈しみの心まで忘れてはならないと感じさせてくれる深い作品だった。今まで見たアニメ作品の中でもかなりクオリティが高いと感じた。まさか鬼太郎でここまで感動する日が来るとは…
この感じの作画・雰囲気でもう一つ作品を作って欲しい。