「【”The Song of Names"ポーランド系ユダヤ人のドヴィドルがデビュー公演時に姿を現さなかった訳をミステリータッチで描く。シナゴーグでの口頭伝承による、ラビの歌が心に沁みる作品。】」天才ヴァイオリニストと消えた旋律 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”The Song of Names"ポーランド系ユダヤ人のドヴィドルがデビュー公演時に姿を現さなかった訳をミステリータッチで描く。シナゴーグでの口頭伝承による、ラビの歌が心に沁みる作品。】
ー 第二次世界大戦中と、大戦終了後。そして35年後の現在を行き来しつつ、物語は進む。ミステリー要素をはらみながら・・。-
◆感想
・第二次世界大戦中、ポーランドから9歳のドヴィドルは英国の同じ年のマーティンの家に越してくる。マーティンの父親は、音楽界を催す興行師であり、音楽を深く愛している。
最初は、相入れなかったドヴィドルとマーティン入れだが、あっと言う間に仲良くなる。
- 生意気なドヴィドルが、ヴァイオリンを手にすると、美しいメロディが流れ出す。才能の発露であろう。羨まし気に見るマーティン。彼の両親もドヴィドルとマーティンを分け隔てなく、大切に育てている。だが、戦況が悪化する中、ドヴィドルは故郷ワルシャワに居る両親と幼い姉妹の安否を心配していた。一枚の家族写真を常に身に付けながら・・。-
・21歳になった二人。ドヴィドルの晴れがましいデビュー公演が決まるも、彼は開始時間になっても姿を現さない。そして、35年が過ぎる・・。
・マーティン(ティム・ロス)は、行方知れずのドヴィドルを探す。そのきっかけは、演奏前に弓に塗る松脂に口づけする奏者を、オーディションで観たからである。
その仕草は、且つてのドヴィドルと同じ仕草だったから・・。
- ポーランド、ニューヨークとマーティンはドヴィドルを探し続ける。それは、我が子同様に育てた父を裏切ったドヴィドルへの憎しみも含まれていたであろう。が、それ以上に、何故に彼は公演に来なかったのかが知りたかったのであろう、且つての親友として・・。-
<漸く、見つけたドヴィドルが語ったデビュー公演の前に彼の身に起こった出来事。
”個”と”家族”と”宗教”。
そして、”口頭伝承”によって生まれた哀しくも美しき響きの、”The Song of Names"
愛する家族がトレブリンカ収容所に収容されたとドヴィドルが聞いたあと、シナゴーグで、彼の家族の名前がつづられた、ラビが朗々と歌った歌が心に沁みる・・。
哀しき、ミュージック・ミステリーの佳品である。>
ナチスの非道を暴く作品が多い中、犠牲になった人への鎮魂というテーマが音楽にあっていますよね。この作品も上映館が少ない。
嵐ライブと重なったとはいえ残念です。