天才ヴァイオリニストと消えた旋律のレビュー・感想・評価
全45件中、1~20件目を表示
「身勝手な天才」「ユダヤ人迫害」「ミステリー」の哀しき不協和音
特別な才能に恵まれながらも身勝手で社会性に難のある天才と、そんな才人を支え時には振り回されてしまう善き凡人たちの対照性は、現実にもよくある。第二次大戦の緒戦でナチスドイツに侵攻され占領されたポーランドで起きたユダヤ人迫害と、ユダヤ教のラビがホロコーストで犠牲になった人々の名を詠唱する「名前たちの歌」を取り上げている点は、人種差別という負の歴史を伝える啓発的な意義が認められよう。青年になった天才バイオリニストのドヴィドルがデビューコンサートの直前に失踪した謎を35年後に追う、ミステリー仕立ての展開にも引き込まれる。音楽も素晴らしい。だが、これらの要素がまとまってひとつの作品になったとき、微妙な不協和音が生じているように感じた。
幼い頃のドヴィドルを大戦前のポーランドから受け入れた英国人家庭の子で、兄弟のように育ったマーティン。だがドヴィドルのデビューをお膳立てしたマーティンの父は、コンサートのドタキャンで借金を背負い失意のまま死んでしまう。それから35年後、中年になりピアノの指導などで生計を立てているマーティン(「海の上のピアニスト」で超絶演奏の熱演で魅せたティム・ロス、本作では演奏場面がなくて残念)が、ある審査会で手がかりを得て、ドヴィドルを探す旅に出る。
ドヴィドルの失踪をめぐる謎は主に2つ。第1に、リハーサル後に演奏会会場を出たドヴィドルはどこに行き、誰に会ったのか。第2に、なぜ会場に戻らず、そのまま姿を消してしまったのか。マーティンがようやく探し当てたドヴィドル(クライヴ・オーウェン)から、第2の謎の真相が明かされる。あの日、ドヴィドルはバスを乗り過ごして偶然ユダヤ人コミュニティに行きつき、そこで「名前たちの歌」の詠唱を聞いて家族の死を知ったのだった。確かに彼にとって衝撃的な事実であり、絶望するのも無理はない。しかしだからと言って、10年近くも養ってくれた家族に迷惑をかけるのを承知で、連絡もなしに消えることを正当化できるだろうか。
第1の謎については、ある人物からラスト近くでマーティンと観客である私たちに真相が明かされる。その内容もまた衝撃的ではある。だがしかし、ここでもドヴィドルというキャラクターの身勝手な印象を強める結果で終わってしまう。原作小説の書き手は著名なクラシック評論家だそうだが、ミステリーの謎解きのインパクトを優先するあまり、キャラクターを魅力的に描く点で妥協した気がする。
レビュー冒頭で「不協和音」とたとえたが、もちろん不協和音がすべて悪いわけではない。基本の協和音に非和声音を重ねて緊張感や陰影を生むテンションコードは、古くは現代音楽やジャズで、20世紀後半以降はポップミュージックにも当たり前のように使われている。本作の“不協和音”も、観る人によっては良いアクセントになるのかもしれない。だが評者には哀しいかな、マスターピースのようには響かなかった。
ジラールならではの「音楽」と「旅」の物語
フランソワ・ジラール、久々にその名を聞いた気がする。音楽に造詣の深い彼の映画では「楽器」や「旅」というモチーフが繊細に絡まりあい、独特な手法で物語が紡がれ、奏でられていく。このあたりに不慣れな監督が撮ると「音楽」の部分がひどくぞんざいに扱われてしまうことも多いが、ジラールだと楽器の弾き方、演奏家の癖、奏でられるフレーズに至るまで、表現が行き届いていて安心感が漂う。一方、本作では時代背景も非常に独特だ。戦時下における音楽家の混迷や、コミュニティ、ユダヤ教のあり方など、我々があまり目にできない描写が次々と登場する。子供時代の主人公らの純朴な演技もさることながら、それがティム・ロスとクライヴ・オーウェンという大物二人へ引き継がれていくキャスティングも、クライマックスで一段と豊潤な香りを放つ。人生の謎を追う旅。感情的なカタルシスとは一線を画した渋くコンパクトな幕切れも、心の内側に独特の印象を刻む。
想像よりだいぶ面白かった。
ティム・ロス目当てで見た。
想像よりだいぶ面白かった。
邦題がダサすぎる、、どなたかがコナンの副題っぽいって書いていたけど、本当にそれすぎて笑った。
ヴァイオリンメインの話かと思ったが、どちらかというとホロコーストの話が主だった。
そのため話が重め。
兄弟2人がだんだん仲良くなる感じがめっちゃいい。
ホロコーストで亡くなったユダヤ人の名前を忘れないように、歌にしているシーンは泣けた。
史実だから本当に辛い、、
本当の家族が亡くなったことを知って何もかも投げ出したくなるのは分かるけど、だからといって育ててくれた家族を捨てていなくなるのは違うと思う。お父さん可哀想に、、本当の息子もやるせないだろうな
あとティム・ロスが無理やりコンサート開くのもなんかなぁ。奥さんもちょっと嫌味が多すぎて、、
再会が感動的ではなかった。
途中まで面白かったが終盤が納得いかないので星4!
でもラスト、ティム・ロスがユダヤの追悼の歌歌ってるのは良かった。
ラッパーポルトの決断
とても冷たい言い方をすれば所詮、ラッパーポルトはアーティストではなかったということ。
35年後の演奏会。自作のトレブリンカの曲はアンコールでやって欲しいと観客目線で思ってしまった。
口頭伝承の、死者の名前を伝えるラビの歌声が美しかった。
丁寧に進むが・・・
エピソードが過去と現在を行き来して、重なるようにドンドン惹き込まれるミステリーだが、ストーリーが「転」ずるところがやや急な気がする。ここが丁寧であれば、もっと評価されてよい映画になったかもしれない。
重要なコンサートの当日の本番前に、忽然と姿を消した天才ヴァイオリニ...
重要なコンサートの当日の本番前に、忽然と姿を消した天才ヴァイオリニスト。
無責任極まりない展開でスタート。
実はこの時、彼は両親と兄弟の死亡を知らされていた。
もちろん、どんな時でも穴を開けないのがプロだが、とても演奏などできるような精神状態ではなかったことは推察できる。
「リラックスが必要だ。女と寝てこい」という友人のアドバイスはもちろん冗談だ。
しかし、本当にコンサート前に女を抱きに行くというのはアホ過ぎる。
失踪の理由は分かるのですが・・
ドゥビドルの失踪した理由は分かるのですが、今まで一緒に暮らして来たマーティン家の方々の恩を考えなかったのでしょうか。
そもそも好きで父親と離れて異国で暮らしていたわけではないので、恩とかは感じて無かったのでしょうね。
コンサート後に亡くなった、マーティンの父親が可愛そうです。
それよりも失踪前に、ドゥビドルとヘレンが寝ていたと言うのにビックリ。
マーティンは、過去現在と、苦しめられるのか・・。
ホロコーストの悲劇
1938年、ロンドンに住む9歳のマーティンの家に、バイオリンの才能を持つポーランド系ユダヤ人の少年ドヴィドルがやって来た。マーティンと同級生で兄弟のように育ったドヴィドルは、21歳でデビューコンサートの日を迎えるが、当日になってこつ然と姿を消してしまった。マーティンはそれからずっとドヴィドルを探していたが見つからなかった。35年後、コンサートで審査員をしていたマーティンは、ある青年のバイオリンの音色を聴き驚いた。その演奏はドヴィドルにしか教えられないものだった。ドヴィドルが生きていると確信したマーティンは再び彼を捜す旅に出る、という話。
ドヴィドルの勝手な行動にイライラしていたが、失踪の原因がホロコーストの悲劇だと分かり、納得するとともに、こんな悲しみを背負って生きていっている多くのユダヤ人を思うと涙が出そうになった。
少年時代の無邪気で自信満々のドヴィドル役のルーク・ドイルが可愛かった。
良作
いくらでも泣かせようと思えば泣かせる話にできるのに、抑えた演出に泣ける
ティム・ロスがいい感じに枯れており、タランティーノ作品からの年月に泣ける
途中出てきたある女性キャラの関係性がいまいち不明だった
ティム・ロスの妻役のキャサリン・マコーマックが同学年と知り、己の成熟具合にまた泣けた
観直し
4本目。
去年観たけど、爆睡したのを思い出し観賞。
通して観ると1時間は寝てたのか。
んー、そう選択したのだから、そう思うしかないけれど、あれで借りを返したとは言い難い。
通して観たとは言え、この展開は眠くなる。
2回目も睡魔との戦いだった。
難しいなぁ...
とても難しいなぁ...宗教の問題は...
知識が乏しいので、作品が伝えたい深い部分を、
自分が理解できているのか?という、その懸念が邪魔をしてくる。
宗教のこと、本当の家族のことなど
理由は解るけども…
10年以上も家族のように兄弟のように過ごしたのに、
あの仕打ちは、とても傷つくし、悲しいなぁ…
でも、ドヴィドルは、それを捨てて姿を消すしかなかったのかなぁ…。
原題の『THE SONG OF NAME 』が、心に深く染みます。
クラシック楽曲と世界を巡る音楽ミステリー。天才ヴァイオリニストが3...
クラシック楽曲と世界を巡る音楽ミステリー。天才ヴァイオリニストが35年前に失踪するストーリーですが内容がちょっと分かり難いので万人向けではない印象。自分には理解し難くこの作品の良さを感じることが出来なかった。
2021-210
予想通り
ナチスから逃れるため、バイオリンの才能を持った子供を音楽家の父が預かり、共に育った2人。成人して才能を開花させ、父が全てをかけコンサートを開くが、リハーサル後に行方不明になる。父はその後全財産を失い、実の息子も苦労を強いられる。今はしがない音楽評論家だが、あるオーディションで行方不明の彼と同じクセを持つ少年に出会う。それをきっかけに彼を捜索始める。
行方不明の原因は、そんなことだろうと思う内容。
邦題が悪いのでは?
確かにコンサートなど不可能だった
確かにあの事実と衝撃の後で演奏などできないでしょう。失踪しなくてもドヴィドルのコンサートは中止になったかもしれません(同様の事実を知ったものは気がふれてしまいました)。でも知るタイミングがもっと早かったら。知ったのがリハーサルと本番の中休みなんかじゃなく、彼がその事実に向き合う時間がたくさんあったなら。そう思わずにはいられませんでした。
振り返ればドヴィドルが戦争被害者から宝飾品を奪うのだって、ちゃんと理由があったんだと思うと泣けてきました。お父さんの作ったもの、売ったものが無いか。罪を犯してまで家族の面影をさがしていたんだなと思います。
このお話は主人公のマーティンと失踪したドヴィドルをそれぞれ3人の役者が世代ごとに演じています。そしてドヴィドルはどの年齢の役者もすごい弓さばき(というのかしら)を見せてくれます。特に少年時代の子は子役だけに目を引きます。防空壕の中のセッションも見どころです。
でも私が一番好きなのはピチカートの練習シーンかな。天才というものはあんな練習を毎日何時間もやってやっとできあがるんですね。
口頭伝承
1951年ロンドン。天才ヴァイオリニストと期待されるドヴィドルのデビューコンサートが開催されるも、当人は本番直前に失踪。親友のマーティンと父親は返金対応等ですべてを失ってしまう。
時は経ち、1986年。若き才能の審査員として働くマーティンの元に、ドヴィドルを彷彿とさせる少年が現れたことから、35年越しに親友を探す旅に出る…といった物語。
ミステリー要素を孕みながら、最初の少年を始めとし、ドヴィドルと関りがあった人々を辿っていく。中々好みの展開です。少年ドヴィドルがあまりにも生意気すぎて少々イライラ(笑)
マーティンはどのような気持ちでドヴィドルを探していたのかな。突然失踪した親友を想う気持ちか、或いは実子である自分以上に手をかけられていたにも関わらず、父親の顔に泥を塗ったことへの恨みか。きっといくつもの複雑な感情が絡み合っていたのだろうな…。
後半は哀しく切ない展開。遂に明かされる失踪の真相。
続くラビの歌声。ドヴィドルの祈るような表情が…。
もうここで終わってくれと願っていたかな。そして…。
時間はかかったものの、思いの外スンと出てきたのがちょっと拍子抜けしたことと、1986年…このころは個人情報保護とかそんなでもなかったのかな??あとは、ヘレン。ただ呆れているようで、実は見つかってほしくなかったのかな?
個々人の複雑な状況や信仰、思想が絡んでくるので、それぞれのキャラクターの気持ちを汲み取ることは難しいけど、ラビの歌や35年間の回想とのオーバーラップ、35年越しの借りのシーンは胸に迫るものがあった。
ドヴィドルは生き残った訳だが、失踪後の35年、そしてヨゼフのようなケースもあり、改めて戦争の犠牲者というのは多岐に及び、そしてあらゆるもの奪っていくのだなぁ…。
ドヴィドルのその後はわからないが、家族や亡くなった全てのユダヤ人への鎮魂歌を想い、その旋律を奏で続けていてほしいと願った作品だった。
自分の人生にとって1番大事なものは?
1938年から1985年のお話。
ロンドンに住むマーティンの家に、ポーランド系ユダヤ人の少年ドヴィドルがやって来る。
彼の才能に惚れ込んだマーティンの父親が、彼をホームステイさせたのだ。
ドヴィドル君、自分の才能が分かってる、感じ悪い奴。そんな奴と同部屋で暮らすことになったマーティン、大変だよね。でも、どんどん仲良くなって、本当の兄弟みたいになる。
21歳になりデビューコンサートの日に突然居なくなったドヴィドル。彼は何故居なくなったのか?マーティンは35年掛けてついに辿り着く。
第二次世界大戦、ユダヤ人には大変な時代。ドゥビドルもワルシャワに居る家族の安否が分からなかった。何を優先すべきなのか複雑だ。
この映画、家族、才能、国民性、宗教観、と、いろいろなモノが詰まってるんだけど、全てちゃんと納得できた。納得できなかったのは邦題だけ。直訳したら「名前の歌」だもん。めっちゃ重要な歌でした。
元々、兄弟モノが好きなので、最初から最後までウルウルしっぱなし。音楽も素晴らしく、登場人物達の行動も共感しまくり。
大大満足でした。
全45件中、1~20件目を表示