クーリエ 最高機密の運び屋のレビュー・感想・評価
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冷戦激化の裏で命をかけて戦い、苦悩した2人の男を描いた作品
冷戦激化の一途を辿り、戦争が起ころうとしていた。
その中で、平和を願う2人の男のスリリングな戦いと家族に偽り続けることの葛藤を描いた作品。
アクションはないが手に汗握る。これが本来の諜報戦だよなと思った。
そして、対立する国同士だとしても平和を願う男たちの友情は韓国映画の黒金星と呼ばれた男を連想させた。
黒金星の方が韓国映画が得意とする感動演出があって泣けたが、比べると今作は淡白な印象。
あとカンバーバッチがスパイをしようとする心理が分かりづらかった。
アクションなしで続く緊張感
中盤以降は、ずっとスリリングで緊張感がある。しかもヘヴィなボディブローを見ているものに叩き込む。フルシチョフをおちょくった演出もあるが、フルシチョフと同程度の感情抑制能力しかないトランプも核ボタンを持っていたかと思うと、キューバ危機がいかに現実味のあったことかと思い知らされる。
イギリスでセールスマンをしているグレヴィル・ウィンは、日本流の接待ゴルフもする如才ない人間。どうみても普通のビジネスマンにしか見えないところが、KGBから怪しまれる心配もないため、スパイとのメッセンジャー役として、MI6とCIAから白羽の矢を立てられてしまう。アメリカにソ連の機密情報を提供するのは、GRU(ソ連軍参謀本部情報総局)のオレグ・ペンコフスキー。
旧ソ連では、KGBによる監視だけでなく密告社会だから親兄弟であっても油断ならない。だから、モスクワでのウィンとペンコフスキーのコンタクトは常に緊迫感がある。読唇術にたけた人間も周りに配置されているかもしれないから、会食での会話はごく自然なものでなければならない。ウィンがペンコフスキーに最後のメッセージを伝えるシーンは、ものすごくリアリティがあって、命の危険が迫っている人間の切迫感が伝わってくる。
ベネディクト・カンバーバッチはさすが。浮気も妻にばれてしまうようなスキのあるセールスマンの表情から、命を張るときの緊張感あふれる顔つきまで振り幅いっぱい演技を見せてくれる。ウィンの妻役のジェシー・バックリーは大好きな女優。片エクボの冷たい笑いが個人的にはツボです。
事実に基づいたストーリーであるが、もっと政治的に冷徹な事実もあったのかもしれない。ハッピーエンドととるかバッドエンドととるかは受けて次第のハードな物語であった。
絶対にスパイにはなりたくない
1960年代の冷戦、そしてキューバ危機を背景に、実話に基づき東西陣営の間で情報を運んだ男の物語。
主役である、素人ながら運び屋を務めたグレヴィル・ウィンをベネディクト・カンバーバッチが演じている。冒頭、普段よりもふくよかだったベネ様が、終盤には痛々しいほどやせ衰えて、いったいどれほど過酷な肉体作りをしたのかと妙に感動した。いやしかし、あの姿を見てしまっては、今後まかり間違ってスパイに成る機会が訪れたとしても、絶対にやりたくないものだと思う。
物語は中盤から緊迫の度を増していく。東西冷戦のさなかのスパイ活動だから、それはもう想像の上を行くような緊張感の連続だったのだろう。実話をベースにしていると分かって観るから尚更である。あまりこの言葉を使うのは好きではないが、文字どおりの「事実は小説より奇なり」。
一方で現代と違い、スパイ行為も防諜活動もアナクロな手法に頼らざるを得ない時代の話ということに改めて隔世の念を覚える。たった60年前のことなのに、何たる不便なことか。この10年後くらいに自分は生まれているのだけど、その目から見ても実に限られた手段で危険なやり取りをしていたのだなあと感心する。
この映画のベースになった実話が、人類史上最も破滅に近づいた機器を救ったのだと思うと、今の平和がありがたく感じられる。
なお蛇足ながら映画自体の話をすると、音楽が素晴らしく、また機能美溢れるソビエト連邦の建物や調度に目を奪われた。飾り気はないがあれは良い。
スパイはつらいよ
スパイ映画といえばスリル・サスペンス・アクションが混然一体となった、まさに映画にピッタリの題材。
そのスパイ役をインテリなイメージを持つベネディクト・カンバーバッチが演じるのだから、まさに適役…と言いたいところだが、本作での彼はスパイ経験などない、ただのセールスマン。
ソ連の極秘機密を横流しする運び屋任務が重荷となり、常軌を逸していくという、至って小市民な役どころは、これまでのカンバーバッチ像を大きく変えるはず。特に終盤で降りかかる受難を耐える様子は、彼の役者魂の真骨頂といえる。派手さはないが、平和のために築かれた英ソの友情物語として観ると良し。
もちろんキューバ危機を阻止したのは、核ボタンのスイッチを押せる立場にあった米ソ首脳の動きも大いにあったので、そのあたりは『13デイズ』を観るとよく分かるかも。
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