劇場公開日 2021年8月27日

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「沈黙の詩人」沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0沈黙の詩人

2021年11月21日
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鑑賞方法:映画館

マルセル・マルソーが、
数人ずつの子供を笑わせて、
子供をおんぶして、
国境を越える話でした。

マザーテレサ:
「大きなことをする人たちはたくさんいます。けれど小さなことをしようとする人は少ない」。
― これですね。

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ただ、構成について、
少し違和感を感じたので調べてみました。

・思ったほど劇中でパントマイムが演じられていないし、
・少しパントマイムを想起させる動作をしても、それはパントマイムそのものではなく、マルソーのマイムをうっすらとイメージさせるものでしかなかったから。

調べた結果、
なるほど、本作品はいわゆる〝マルセル・マルソー物語〟として脚色するために、時系列的には前後するエピソードをシェイクさせた、2つのテーマによるものであったと判明。

すなわち
①10代でドゴールの呼びかけに応えてパルチザンに加わり、子供たちを助け、堪能な英語力で連合国軍のパットン将軍の部隊を渉外係として支えた「対独戦争の功労者」としてのマルソー。
(パントマイミストになる以前のマルソー)。

そして
②戦争が終わってから=終戦後に=演劇学校に入って、ジャン・ルイ=バローらと共に演劇・パントマイムを学び、フランス政府も絶賛する「世界一のパントマイマー」になったこと。

よって、シェイクです。
フランスの誇るパントマイマーマルセル・マルソーは、若い頃にもレジスタンスとして画期的働きを成し、文武両面で偉勲を成した国家の英雄であった旨伝える、
そういう〝偉人伝作品〟に仕上げたわけですね。

観始めて首をかしげた「パントマイミストとしての描写がなんか中途半端かな?」という違和感の理由がこれで解明しました。

せめては映画のエンディングででも、マルソー本人のアーカイブ映像をしっかり流してしてくれれば良かったですね。
あの冒頭の、連合軍兵士たちの前で白い衣装で立つマルソーの こじつけシーンは、きっとそれで大幅に違和感が緩和されたと思うのですが。

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【派生して思うこと】
コロナウイルスによる不況で、世が荒れ、隣国への蔑みが止まりません。
国内においても貧しい移民や生活保護受給者に向けて、あるいは“上級国民”と富裕層へのルサンチマンの憎悪が逆巻きます。そのようないまの我が国日本にとっても、教わること大の映画でした。

ヒトラーは不況の最中に台頭しました。
ヒトラーは差別と分断を煽りました。
ヒトラーは人間の心の中に存在する差別と分断の思いを焚き付けることで、国民を熱狂的親衛隊に仕立て上げたのです。

水色のベレー帽をかぶった少女にお父さんは、「そうであってはいけないよ」と語ります。

ドイツナチの軍事侵攻はフランスを南下して国土を奪い、フランス国内においてはフランス人=Vichy政権が自国の国民を心の内側から侵した。
劇中で欧州の地図が表すその侵食具合が、ハンフリー・ボガートが「カサブランカ」(1942)で見せた「Vichyワインの叩き棄てシーン」を想い出させます。

そして重要な出演者、実在の「リヨンの屠殺者クラウス・バルビー」は、芸術を愛し、生まれたばかりの娘にも何かを習わせたいと笑顔で望むマイホームパパ。
ところが彼はピアノを奏でながらピストルを取り、呆気なく捕虜を処刑し、レジスタンスの生皮を剥がす。

ドイツは芸術を愛する国。しかしその芸術を用いて戦火を鼓舞した国でもあります。

自分の心の中のナチス。
自分の心に蠢くヘイト。
それら自らの心に巣くう二面性や悪魔性と、血を流してでも戦って、崇高な人間の魂を奪還しなければね。

棘のある言葉を慎み、
温かな眼差しと 手と腕のいざないで
そよ風を生み出すパントマイマーのようになりたいです。

・・マルソーが子供たちの手を取ったこと。子供たちをおぶったこと、
あれも、人の命を体温で感じるパントマイムだったかも知れません。

エマやミラを失った彼の、祈りのマイムだったかも知れません。

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きりん
レモンブルーさんのコメント
2021年11月26日

きりんさん コメントありがとうございます。そうですね💦 気楽にやって行きます。

レモンブルー
レモンブルーさんのコメント
2021年11月24日

きりんさん 私もびっくり‼️でした。😄東座はもちろん昔から知ってましたが、元々 岡谷出身で、スカラ座が主な鑑賞場所です。でも、私の息子のオクサンや辰野の友人から東座の事を聞いていて、たまたま「アナザーラウンド」の事を知って見始めました!実は 私、別の映画レビューサイトにも参加してまして…そちらはここより後から始めたのに、同じレビューでも、反応が違って、コメント返しも簡単でフォロワーも多いのです。そして最近 共感やコメントなどがとても少なくなっていたので…このサイトから遠ざかろうとしてました。でも…きりんさんと こうしてお話出来たので…もう少し こちらにも投稿しようと思います💦それで、「アナザーラウンド」と「最後にして最初の人類」のレビューも転載しました。

「あん」と「HOKUSAI」は 私のレビューの中でも読んでいただきたいものでしたので、とても嬉しい!です…!
よろしくお願い致します!

レモンブルー
きりんさんのコメント
2021年11月24日

レモンブルーさん

し-お-じ-り⁉️
あ-ず-ま-ざ⁉️
びっくりです😲(笑)

東座のことは「モロッコ、彼女たちの朝」、「パリの調香師」ほか、あちこちで(応援の宣伝を兼ねて)触れています。

フォローありがとうございます。もちろん僕のほうからもぜひお友だちになって下さいです。

「あん」とか「HOKUSAI」とか、レモンブルーさんのレビューやコメントをずっと読んでいて夢中になっていてお返しが遅れました。

フォロアーたちの人となりや横のつながりが見えてくるのも、このレビュー欄の奥の深さですよね🎵

きりん

きりん
レモンブルーさんのコメント
2021年11月24日

きりんさん はじめまして。 共感をありがとうございます!m(__)m そして、コメントありがとうございます。レビュー投稿後にクラウス•バルビーについて私が調べた事も よくご存知で…本当に戦慄するような事実でしたね…映画のラストのテロップだけを見ると全くその事実を知ることなく長いこと獄中に繋がれてたとしか思えませんでしたが…。この事実をこのアメリカとドイツ合作の映画があえて隠した?のは 何故か…やはりマルセル•マルソーの素晴らしき勇気と行動に焦点を当てる事が第一だったからだと思いますが…。でも…ラストのシーンでのマルソーの表情は悲しみとも、悔しさとも、虚しさとも見える涙を滲ませていたのが印象的で、最初はそれはエマ達を失った悲しみなのかなと思ってましたが、バルビーのその後を知った時、あのマルソーが流した涙と表情は 自分一人では抗い切れない大国の思惑への沈黙の抗議だったのではないか…映画制作側の自国の罪深さへの贖罪をあのシーンに(公にならないギリギリの範囲に》込めたのではないか…と思うようになりました。
きりんさんのレビュー とても共感します!過去の過ちを二度と繰り返さないようにしっかりしなければなりませんね!

ところで 私も東座で鑑賞いたしました😳実家が塩尻です。
そして、昨日「素晴らしきキノコの世界」を観て来ました(*^^*)
いつか すれ違う?かもしれませんね(笑)

レモンブルー
きりんさんのコメント
2021年11月24日

〉日本は戦後アメリカ一辺倒になってしまった
〉戦後のヨーロッパ政治を見直しことは重要

ワンコさんお返事ありがとうございました。

幾世紀も国境を接して戦争を繰り返してきたヨーロッパ各国が、ついには「EU」を創り、
「EU」がノーベル平和賞を受けたことは、欧州の人たちにとっては感慨深かったことでしょうね。

日本は“島国”であることのメリットもあるけれど、各国と知り合って共生していく上ではデメリットもものすごく大きい。
「海」の存在が、物理的にも心情的にも、他国との隔たりを深くする。

きりん
ワンコさんのコメント
2021年11月23日

こんにちは、
戦後、日本は戦後、アメリカ一辺倒になってしまったようなところがあって、だから、また、再び、戦後のヨーロッパ政治を見直すことは、重要なんだと強く思います。フランスはヨーロッパ復興のためにドイツと融和したり、可能な限りの政策を打ってきましたから。日本も韓国の政治家も、もっと賢くならないとダメだと思います。

ワンコ
はなもさんのコメント
2021年11月21日

きりんさん
 棘のある言葉を慎み‥温かな眼差しと手と腕の誘いでそよ風を生み出すパントマイナーになりたい‥、素敵な文章です😍
同感です。でも、なかなか出来ない毒吐く古い人間です😮‍💨

はなも
こころさんのコメント
2021年11月21日

きりんさん
マルセル・マルソー、そうだったんですね。レビューに書いて頂き、有難うございます。
マルセル・マルソー、そしてジェシー・アイゼンバーグの想い、祈りを感じる印象的な作品でした。

こころ
NOBUさんのコメント
2021年11月21日

おはようございます。
素晴らしきレビューですね。誰しもが持っているかもしれない"心の中のナチス"。
私も意識して出来るだけ寛容な精神を維持したいモノです。では、又。

NOBU
きりんさんのコメント
2021年11月21日

クラウス・バルビーのその後についてはWikipediaが詳しい。
A級戦犯を戦勝国が厚遇する事例に震撼する。

きりん
きりんさんのコメント
2021年11月21日

【付記】
映画館東座では、パントマイミスト藤森まさやすさんの実演公演を、上映に引き続いて客席で生で行ってくれました。
東座さん楽しい企画、ありがとうございました🎵

きりん