「【後年の天才パントマイム・アーティストは、若年期は高所大所の考え方を持つ人道主義者だった。マルセル・マルソーと仲間達が子供たちを連れ、スイスを目指す緊張感が凄い作品。】」沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【後年の天才パントマイム・アーティストは、若年期は高所大所の考え方を持つ人道主義者だった。マルセル・マルソーと仲間達が子供たちを連れ、スイスを目指す緊張感が凄い作品。】
ー 今作でマルセル・マルソーを演じたジェシー・アイゼンバーグは”あるシーン”を除いて高速台詞トークを封印している。そして、それが効いている。ー
◆感想
<Caution‼内容に触れています>
・ユダヤ系の少年少女が、アルプスを越え、永世中立国スイスに逃げ込む映画では「少女ファニーと運命の旅」が記憶に新しいが、今作の逃亡シーンも相当にスリリングであった。
・ピエロになりたかった肉屋の息子マルセル。彼は、当初はユダヤ系の子供たちを逃がすことに手を貸す事より、自分の夢を果たす事に夢中になっているように見えた。
ー だが、両親をナチスに殺された少女、(冒頭の苛烈なシーン・・。)が笑顔を無くしている時に、笑顔を取り戻させる仕草により、少女が微かに微笑み、子供たちが彼の仕草で大笑いする姿を見て、生来の人を笑わせる楽しさに気付いたのではないかな・・。ー
・恋心を寄せるエマも、彼の姿を見て心が動いて行く。
だが、そんな中でも、ナチスはフランスを占領し、本格的に民族浄化に入る。
ー ナチスのバルビー親衛隊中尉の執拗なまでの追跡。そして、レジスタンス運動に身を投じたエマとミラは市民の密告により、捉えられ・・。
当時、実際に多かったというフランス人の密告。匿う人も多かったが、密告する人もいたのだ。
ナチスの人の心の弱みに付け込んだ行為は、赦しがたい。ー
・マルセルが仲間に言った言葉が素晴しい。
”敵を倒すより、未来を考え、一人でも多くのユダヤ人の子供を救おう・・”
・そして、いよいよ危険が迫り、マルセルたちは列車で子供たちをスイスへ逃がそうとする。この列車内での彼らと、バルビーとの緊張感溢れる遣り取り。
高速台詞で、バルビーの気を逸らそうとするマルセル。トイレに隠れるエマ。
密告により山中に逃げ込んだマルセルたちを執拗に追い詰めるバルビー達。
<テロップで流れた、バルビーの末期。一方、世界的名声を得たマルセルとの対比もシニカルである。
奢れるものは久しからず、である。
バルビーにも可愛い幼子がいたのに・・。
悪行は必ず報いが来る.善行はきっと、誰かが観ている。冒頭とラストでエド・ハリス演じるパットン将軍が多くの連合軍兵士の前で言ったように。
そして、マルセル・マルソーの瞳に涙を浮かべたパントマイム。
あの涙は、エマを思ってのモノだと、私は思った。>
<2021年10月17日 刈谷日劇にて鑑賞>
NOBUさん お久しぶりです。共感ありがとうございます。
この映画のレビューを書いた後で Wikipediaでクラウス•バルビーを調べたら…非常に驚愕の事実がありました❗彼は晩年獄中で亡くなるのですが…実は…。それを知って、ラストのマルセルの涙は、大きな抵抗し難いものへの虚しさへの涙だったのかもしれないと思いました。