「【芸術の意味を問う】」沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家 あささんの映画レビュー(感想・評価)
【芸術の意味を問う】
2021年夏は「復讐者たち」「アウシュビッツ・レポート」「ホロコーストの罪人」そして本作品「沈黙のレジスタンス」とナチス関連作品が4作品ほぼ同時期に公開され、それぞれ違った角度から捉え描かれているが、
本作はパントマイムの神様と呼ばれたフランスの芸術家で俳優のマルセル・マルソーが有名になる前に経験した第二次世界大戦の頃の話を描いている。
目を覆いたくなるようなナチスの残虐行為の描写に関しては他作品同様、強烈に胸をえぐられる。
前半は比較的に穏やかに物語が進むも、兄や想いを寄せるエマたちとレジスタンスに身を投じてからは物語は一転、サスペンスさながらのハラハラドキドキ緊迫したシーンが幾つも繰り広げられる。
ナチスがみせた悪夢のような状況下でさえも人々に求められていた芸術。芸術には魑魅魍魎な人間界とは無縁のような神々しさがある。かつて神への捧げ物と呼ばれたように。
劇中に出てくるクラウス・バルだって愛娘に芸術に触れさせたいと願っていたし、実際にあのヒトラーだって芸術をこよなく愛していた。芸術とはいつの世も善人も悪人もひれ伏せてしまうような壮大なパワーと美しさがある。
また本作からマルセル・マルソーという一人の芸術家としての誇りと気概さも知ることになる。
復讐をするのではなく、死んでいった同胞のために、そして同胞達の残した子ども達を守り、後世へ繋ぐことを決意し成し遂げたマルセルのその勇気に敬意を表したい。
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