劇場公開日 2021年6月18日

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「人間の狂気という最長不倒」RUN ラン R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人間の狂気という最長不倒

2024年11月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

もしかすれば見るのは2度目だったのかもしれない。
このサイコスリラーの型は素晴らしくよくできている。
以後の多くの物語でもこの型が使われている。
しかしおそらく最初だったのはあの「ミザリー」だろう。
さて、
この作品で最も難解な部分はタイトルだろうか。
RUN
冒頭に登場するこの子は「走ることができない」とする見通しの記述
生まれて割とすぐに死んでしまった「クロエ」の先天性疾患と見通し。
走ることができないことを「RUN」という一言で表現している。
サブタイトルには「筋肉機能の全不全により体を動かすことができなくなる。走ることができない」とあったが、英語表記には「to move,feel, walk,or run.」
しかしタイトルは単にRUN
つまりタイトルはクロエに対する応援のメッセージのように感じる。
クロエは母親に閉じ込められた部屋から脱出する際に自分のつま先が動くことを発見する。
危機的状況が本来の機能を呼び戻すのかもしれない。
物語の奇妙な部分が徐々に明らかになっていく表現は、スリラーとして申し分ない。
スマホを持たせてもらえないことは、潜在的にクロエが持つ母への違和感を助長させていったのだろう。
成長と共に考え方の幅も広がりを見せることもあったのだろう。
母の名前の薬「トリゴキシン」は犬用の筋弛緩剤だった。
おそらくそれは末期がんの犬に対する安楽死用のものという設定なのだろうが、ネット検索すると犬用の鎮痛剤、抗炎症薬とある。
クロエの母に対する違和感が確信となるが、助けを呼ぶのは難しい。
配達の運転手も始末された。
自殺覚悟で飲み込んだ劇薬
この手段の設定は上手だと思った。
サイコパスの母の娘に対する歪んだ愛情こそ、彼女の原動力だからだ。
物語はその後クロエがどうなったのかは描いていないが、7年後にクロエが収監施設を訪問するシーンが描かれている。
それこそがこの作品、サイコスリラーの真骨頂なのだろう。
なんとも恐ろしい物語だ。
人間の狂気に勝る怖さはないのかもしれない。

R41