「家庭菜園」RUN ラン なつさんの映画レビュー(感想・評価)
家庭菜園
家庭菜園は楽しい一方で結構大変。
定期的な肥料とそのタイミング、毎日の水やり。
その分、大きな収穫があると大変満足するもの。
この母親はまるで家庭菜園のように娘を囲む。
そこで採れたまるまると育った野菜の調理、愛情という毒を与えながら、とても楽しそうに娘を慈しみ世話をする。
電波も届かない辺鄙な家で2人きりの生活。
そんな毒になんの疑問も持たずに一心に愛情を受け、それを返す娘。
至れり尽せりの生活をされて大事にされていたら当たり前だわ〜
身体の欠けた部分があるからこそ、の結びつきが強いように思う。
動かない足、喘息、糖尿病などなど誰かの手が必要なものばかり。その萎れた部分を元気にさせるのは母の手。
きっかけは娘の自立のための大学受験。
糖尿病を抱えてもチョコレートの誘惑に勝てなかった為に買い物袋に手を入れた時、偶然見つける自分用ではない薬。
なんだろう?
母親の名前の書かれたラベルの薬を飲んでいる違和感。
自分は自分用ではない薬を飲んでいる…
あらゆる方法で薬の成分を調べ上げ、自分の母の手から渡されていた薬は身体を蝕むものであった。
身体の自由を奪うというまさかの軟禁。
そこからは待ったなしの走れず歩けない娘の逃走劇が始まる。
その方法はとても大胆。
彼女の頭の良さが分かる。
逃げろ逃げろ。
逃走中怪我をしながらも少し動いた己の足指を見た喜びと涙に表情がジンとくる。
逃げても尚捕まるうちに、母親の愛情が歪みその執着ぶりな事実がどんどん明るみに出ることにより、こっちも驚く。
それくらい、彼女達の生活は完璧だったのだ。
独り立ちが嬉しいと語る母。その夢を叶えたい娘。
嘘で固めた菜園。
トムさんはほんとに無事だったのかな。
最後、寝たきりの母親の面会に行く7年後の娘。
まだまだ足などが不自由ながらも自らの手で他の身体の不自由な子たちのケアをする。過去にされていた境遇とまるで逆。
その出来事を笑顔で語り続ける。
笑うことも頷くこともできない弱りきった母親。
そして、娘からの投薬が始まる。
何年かけてもそのトラウマは消えない。
きっと7年間、己を蝕んでいたであろう緑のカプセル。
犬の薬。
薬の時間ですよ。