「お薬の時間よ」RUN ラン U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
お薬の時間よ
最後の台詞に戦慄する。
サイコスリラーで良いのだろうか?歪んだ母性によるおぞましい話だった。
クロエの演技に引っ張られまくり、終始ゾワゾワしてた。彼女が疑惑を持つのが唐突で、最後までそのキッカケが分からないままだったのだけど、何か薬が増える度に体に不調が出てたのかもしれない。
子離れできないにも程があるのだが、本当の親子ではないので「子離れ」ってのもちょっと違う。
子供の成長による疎外感とでも言うのだろうか?それを回避する為に、薬物を投与し続ける。
喘息の発作は死を予感するレベルだと聞く。
歩けない不自由さは、想像もできない。
そんな彼女の17年間って時間が、何よりも怖い。
人為的なものであったならば、地獄であろう。
人の業ってのは凄まじい…。
それまでの日常が一転する恐怖と喪失感。
母親の言葉使いが、何より恐怖。
一見して知的で常識を弁えてるような風貌も、その恐怖感を煽ってくれる。
愛情に溢れた言葉なのだけど、自分に向けられたモノではなく、愛情とはかけ離れた感情から発せられる言葉であると認識が出来てからは呪詛のようだ。
その裏側を想像してしまう。
そうなのだ。
この想像力が介入してしまう余白こそが真骨頂。
病院の廊下で、車椅子を押されながら、助けを呼ぶ声すら出せずにいる彼女の表情、その内面を共有してしまうのだ。
痩せこけた母親を前に、世間話でもするかのように薬物を投与しようとする感情の裏側に戦慄する。
脳内で構築され勝手にリアリズムを持ち出すアレやコレや…監督は、語り部としては絶品だ。
それにつけても女性ってな、化粧一つで化けるもんだなあ。ちゃんと7年後に見えたもんな。
まるで2割の希望と8割の絶望を描いておけば、サイコスリラーは成立するかのようでもあった。
お見事でした。