「スリリングな展開とモヤモヤ感」RUN ラン nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
スリリングな展開とモヤモヤ感
車椅子生活の娘を、賢く力強く自立できるように育てる母親。
しかし、偶然母親の用意する薬に娘が疑念を抱いたことから、緊迫の攻防戦が始まり、最後までハラハラしながら見ることができました。
スマホもない、自由に外に出ることもできない娘が、あの手この手で薬の情報を得たり母から逃れようとしたり、考えながら逞しく行動する様子は、スリリングかつ応援したくなります。
また、今まで信じていた人間、最も近しい母親が、危険な人間なのではないかと不安になってゆく様子、恐怖も印象的です。
しかし、母親の狂気の源、母親が何故そこまでこだわるようになったのかがあまり描かれていないのは、モヤモヤしました。
母親の背中の傷は何だったのか、気になりますが……。
どこか見落としていたのか、はっきりと描かれていなくとも過去に虐待を受けていたことを示唆しているのか。
とは言え、具体的な過去や心情の描写がないことで、世の中の毒親の理不尽な狂気を象徴している存在というようにも感じます。
子供への異様な執着振りや、ひたすらあなたの為だとか言う身勝手なセリフなど、まさに毒親という感じで。
明確な理由が分からない方が理不尽で恐ろしく感じますし、あえてモヤモヤさせられてるのかもと。
自ら大学受験できるまでの賢さと意欲のある娘に育てておいて、何故今妨害するのか、矛盾しているような……とも思いましたが。
この母親は、子供を懸命に看病することで周囲の関心を集めたいという代理ミュンヒハウゼン症候群のような感じで、それに加え学力の高い優秀な子供を育てることで自分も優秀だと証明したいタイプなのかなと。
優秀な子供を育てる自分に満足していたのが、いざ独立されるとなったら、色々と不都合な部分が露見してしまうから、という感じなのかなと解釈しています。
ラストも、負の感情の連鎖があるように感じ、良くも悪くも微妙にスカッとできず考えさせられます。
母親とは完全に縁を切って幸せになってもらいたいですが、やはりそう簡単に復讐心は断ち切れないものか……とも思います。
母親役も娘役も迫真の演技で、スリリングな展開は大いに楽しめつつ、毒親の影響を考えさせられる作品でした。