「悪寒」RUN ラン ONAKAMAさんの映画レビュー(感想・評価)
悪寒
本作は小規模公開も相まって満席でした。
前作「Search」は自分の大好きな狭い空間・狭い視野から繰り広げられるストーリーが魅力的でしたが、今作は少し広がったとはいえ、大方のストーリーは家の中で繰り広げられるので、この地形をどう活かすか、とても楽しみでした。
主な登場人物は2人。母ダイアンと娘クロエです。予告で流れていた通り、優しい母が買ってきた食料の中に、自分が飲む薬ではないものを飲ませてきたことに違和感を持ち、原因を究明するのが前半部分です。この部分の少しずつ分かる違和感がじわじわした恐怖を煽るので、背筋がゾクゾクっとしていました。
クロエ役のキーラ・アレンさんは実生活でも車椅子で成功されているという事もあり、移動のシーンがとても機敏で、新たな演者の生き方が見れました。中盤の屋根を這いずるシーンはどうやって行動したのか、メイキングがとても気になります。
前述した屋根を這いずるシーン、母親に軟禁されるシーンなのですが、今までに学び作ったものを活かして、部屋からの脱出を描いているシーンにとても緊迫感がありました。電動工具でヒビを入れ、窓に水を吹きかけて窓を割り、ちゃんと布団で窓の割れ跡をいい具合に避けると喘息で体調が芳しくない状態であったのにそこまで頭を使うとはお見それ入りました。
なんとか逃げようとはしましたが、やはりダイアン、捻くれた愛は娘の行動を遥かに凌駕しました。あっという間に実家にまで連れ帰ります。そこで判明したのは、ダイアンは実の母ではない、自分の体は元々健康だった、ダイアンの実の娘は生まれて間も無く死んでいた。ということです。ありがちな感じですが、ダイアンの狂気っぷりを際立たせるには十分です。クロエはせめてもの反抗で塩酸?を飲んで自殺を図ります。
ただ幸か不幸か生きてしまったクロエは再びダイアンと再開します。ダイアンはあっという間に娘の点滴や管を抜いて、病院から抜け出そうとします。病院ザルすぎん?とは思いましたが、そこはご愛嬌で。ただクロエは立てるようになっており、そこに驚いたダイアンは油断して駆けつけた警官に撃たれ、足を滑らせ、階段の下まで落ちていきました。なんか呆気なかったなという感じです。
7年後、杖を使えば歩けるようになったクロエが、ダイアンの入院している病院へ行きます。クロエと同様、下半身麻痺になっていたダイアンにここ最近の思い出を語りながら、復讐として飲まされそうになった薬を飲ませようとしながら終わります。
ダイアンが自分より弱い存在(クロエ)を身体的に弱らせていく虐待をする事で、もの扱いにしていましたが、きっとその考えが自然とクロエにも受け継がれており、もしクロエに子供ができたら…と思うと少し怖くなりました。連載というものは怖いです。
鑑賞日 6/19
鑑賞時間 15:30〜17:10
座席 D-7