モーリタニアン 黒塗りの記録のレビュー・感想・評価
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実話をドラマティックに作り上げた傑作
グアンタナモに収容されていたモーリタニア出身の男性の手記を映画化した作品。
本作は、実話を基に、と言うよりそのまま実話のような感じであった。
時間軸を色々使い分けて、かなりドラマチックに展開しており、2時間越えの作品であるが、
全く飽きを感じさせない力作。裁判に関する作品であるため、言葉が難しく、結構理解するのに大変かと思ったが、本編の芯はしっかりしてあり、なかなか見ごたえのある作品だった。
原告側と被告側の弁護人が真実を追求していく上で、とんでもない事実を知っていく様は、これまでの裁判系の映画ではあまり見られないような内容だったし、名優たちの熱演も素晴らしい。
裁判でのモハメドゥを演じたタハール・ラヒムのスピーチは感動ものだった。
「ゼロ・ダーク・サーティ」を思い出させる拷問シーンは、本当に常軌を逸したものだし、看守側の心理もかなり異常だったことがわかる。しかし、あれが本当なら米国は人権侵害で訴えられてもおかしくない。そして、今作ももしアメリカ人監督ならこういった描き方は出来なかったかもしれない。
決して人ごとではない
世界の奴隷制度を語るとき、モーリタニアは必ず話題に上る国だ。国として表向きは奴隷制度を廃止したと言っているが、実際には続けられているらしい。モーリタニアは日本と無関係の国ではない。スーパーで蛸を買うと、大抵は原産国がモーリタニアとなっている。
本作品を観て、米軍に法律家がいることに驚いた。そもそも軍隊に法律家がいるのは矛盾そのものである。軍隊は人を殺す組織だ。軍隊の訓練は殺傷武器や大量殺人兵器や乗り物などの使い方、建設技術と破壊技術、近接格闘術、サイバー攻撃、他人を操る心理技術などで、あとはそれらの技術を支える体力づくりである。法律の知識は軍隊の訓練にはない。そもそも人を殺すことを善としている以上、殺人を悪としている共同体の法律では裁かれない。そして米軍の最高司令官は大統領である。
本作品でベネディクト・カンバーバッチが演じた軍の法律家スチュアートは、軍に入ってから法律家になったのではなく、弁護士資格を持つ法律家が軍隊に入ったのだと思う。軍務に就いていることには矛盾がなかっただろうが、法律家としての働きを求められた途端に、自分の存在の矛盾に悩み始める。そして法律家としての意志が表面化する。自分は真実を知りたい。
真実を知りたいのはスラヒを弁護することになったナンシー・ホランダーも同じである。法律家としての冷静さと人道的な弁護士としての熱さを兼ね備えた複雑なヒロインをジョディ・フォスターが見事に演じている。美しい青い目は昔のままだ。
世界は軍と弁護士のように、矛盾を抱えている。人を救うはずの宗教であるイスラム教徒がスンニ派とシーア派に分かれて対立しているし、紛争地域に手を突っ込むアメリカとロシア、それに中国がいる。武器商人は武器を作り続け、劣化して使用期限が切れそうな武器をあちこちに売り捌く。やがて軍産複合体となった巨大な利益集団は、世界中から紛争の火種が消えないように、火を付けて回る。末端のサラリーマンはただ熱心に商品を売っているだけだし、軍の下っ端は目的もわからずに派遣されて人を殺す。
頂点に立つはずの大統領も、軍産複合体の意向を無視できない。当時史上最悪の大統領だったジョージ・ウォーカー・ブッシュ・ジュニアからバラク・フセイン・オバマに代わっても、軍産複合体を解体するようなドラスティックな改革は出来なかった。
モーリタニアはアフリカの国らしく政情不安が続いて政策はブレにブレている。国内の治安も悪い。しかしスラヒはモーリタニア人でも抜群に優秀で、アラビア語だけでなくドイツ語やフランス語を話せるし、尋問を受けている間に英語も習得してしまう。並大抵の頭のよさではない。本作品は、才能に溢れたモーリタニアの若者が、アメリカの軍産複合体によって無為の15年を過ごしたという話で、バカが利口を支配するという、世の中に溢れている事例のひとつである。
これからも世界はバカが利口を支配し続ける。それはバカを支え続けるバカがいるからである。人はパンの前には自由と権利を投げ捨ててバカになるのだ。人ごとではない。元からバカな人はしょうがないが、利口な人はパンのためにバカにならないように身を引き締めていなければならない。アベシンゾウやアホウタロウが20時に当選確実が出るような選挙をしている国では、スラヒの権利は守られない。名古屋の入国管理局の牢獄で殺されたウィシュマさんは、スラヒと同じ目に遭ったのだ。繰り返すが、本作品の出来事は、決して人ごとではないのだ。
プロパガンダの中から真実をえぐり出す作業が見事でした。
アメリカの闇では終われない
明滅するシーンがあるので注意してください
最初にグアンタナモに訪れるナンシー目線から映る兵隊の首筋や兵隊の口元どアップごしに映されるナンシーとテリー
単純に頼もしいという面の裏側には畏怖もあるように思えて凄く印象に残っています
最後にちょくちょく観られる看守との触れ合いも珍しくはないシーンですがやはり本来の人柄を思わせるいいやり方ですね
明滅するシーンは本邦でもポリゴンショックが有名ですが、拷問シーンとしてこうしてみると本当に耐え難いものであると解らせられます
とてもじゃないですが良かったねで終わらせられません
バットエンドで始まり、マイナスがちょこっとゼロに近づいただけです
ですがこうして闘い、手記を残してくれたおかげで知ることが出来たことに深く感謝します
裁判における無罪≠無実なんです。ただ、今回はそもそも適切な捜査・裁判がなされていない
裁判における無罪と無実は異なっていて、証拠がそろっていなければたとえ犯罪を起こしていても無罪になります。
この作品は正当な裁判手続きがないまま収監され拷問され自白させられ死刑にされそうになった主人公が最終的には釈放される物語です。
9.11テロに対して怒りが爆発したアメリカが正式な司法手続きを無視して容疑者を死刑にしようとしたのには驚きましたが、主人公がテロに対してどのように関与したのかは結局わからないままです。
手続きに問題はあったにしても彼は犯罪を犯していたと多くのアメリカ人は考えているようですね。
だからこそアメリカではこの作品を作ることができず、イギリスBBCが作ったのでしょう。
9.11テロの被害を受けたアメリカ、その報復としてアフガニスタンとイラク政権を打倒したのはいいが占領地で甚大な被害を受けたアメリカ。
正直なところ、平和な日本にいては作品の背景は理解できない気がしました。
安全のためならということなのだろうが・・・
真珠湾空襲の後、日系人が強制的に収容所送りになっていたことがあったが・・・
(罪ない人を云々と言うより、国防上、日系人絡みのスパイ網を寸断するのが目的だったとか)
テロ容疑で拘束するのはまだしも、拷問による自白と言うのが・・・
結果ありきで裁判と言えば、東京裁判も同じと思うが、変わらずにやってるんだなという印象。
途中の照明チカチカの映像表現は、鑑賞する上で注意喚起すべきレベル・・・ではないのか?
ちょっと気になった。
親の死に目に会えなかったのは、心中察するものがあるものの、エンドロールにて本人も幸福そうなのが救い?
また、このような映画、興行成績がいかほどのものか知らないが、上映されるだけ感謝。
(邦画に特別観たくなるようなものが、ほとんどない・・・)
ジョディ・フォスター健在
グアンタナモ
The different aspect for 911.
This is worth to see. Since 911 occurred, over 21 years passed. Besides 3000 people casualties, chaos and nightmares caused innocent suspects sacrificed after many many years. That is also sad tragedy of 911.
911の違った側面。
これは一見の価値があります。911が起きてから21年以上が経過しました。3000人の犠牲者に加えて、混乱と悪夢によって、罪のない容疑者たちが長い年月の間、犠牲になりました。これも911の悲しい悲劇です。
よく耐え抜きました!
1 9.11同時多発テロが生み出した狂った正義感。それに巻き込まれた若者の姿と彼を巡る人々の動きを通して、アメリカの消えざる汚点を描いた社会派サスペンス。
2 テロがあった直後、ブッシュ大統領は、この責任は必ず取らせると国民に誓いを立て、テロの首謀者や大量破壊兵器を巡り、狂ったようにアフガンやイラクを攻撃。同時に、テロの関係者とされた多くの人々を拘束し裁きを受けさせようとした。主人公もその中の一人。
3 映画は若者、弁護士、起訴チ−ム責任者の 動きを散りばめながら展開していくが、次第にアメリカが彼に何をしてきたかが明るみとなる。真実が全て暴き出されたと思った瞬間、さらなる恐怖と狂気の事実が告げられる。
4 この映画には国の犯罪を暴く生真面目がある。そして、主人公を巡る弁護士と起訴チ−ムと機密の壁がせめぎ合う知的面白さもある。何より、国家権力に対する主人公の揺れる心の動きやへこたれない姿を真芯にした構成。そこらへんのバランスが良かった。
5 ジョディ・フォスターとカンパ-バッチは脇に回ったが、狂気の時代の中で、流れに棹さす良心を体現し、好演。主人公は強靭で折れない心と寛容な精神を持った本人を再現して魅力的であった。
6 最後、主人公が自由となった後の映像が紹介されたが、笑顔と伸びやかな姿に安堵を覚えた。
疑わしくは罰せず
見ていて辛い
不自由では、誰も幸せにならない。。
Happy Reading
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