「愛すべき容疑者」モーリタニアン 黒塗りの記録 せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)
愛すべき容疑者
9.11のテロ事件の首謀者として収容所に監禁されたモハメドゥを救おうとする弁護士とそのモハメドゥの死刑起訴を任された海軍の男と、モハメドゥの監禁された様子を描く映画。
ポスターからするに背筋を伸ばして見るようなアメリカの政治・歴史ものかと思いきや、モハメドゥの収容所での描写と事件の捜査をする描写が交互に繰り返される。収容所のシーンではスクリーン比率が狭まって、画質も古いヨーロッパ映画の雰囲気。
9.11周りの映画は沢山見たけど新聞記者の取材中心だったり、軍や司法関係者のお堅い会話劇で進んでいくのが多かった印象。今作はそれと反対に、むしろモハメドゥ自身の人柄をちゃんと描いてムハメドゥと一緒に収容所を体感させることで観客に訴えてる。
弁護士との初面会シーンで示されるようにユーモアを上手く使えるモハメドゥは、収容所内でも少しほっこりする箇所が沢山。徐々に英語を覚えていくものの兵士の言葉から学んでるから最初らへんの言葉遣いが最悪なシーンとか、収容所内で仲良くなる隣の男との会話や、徐々に監視員と仲良くなってたり、この男を愛さずにはいられない。
その後に拷問のシーンで、音と光で観客も同じように拷問を体感させられるので、映画の語り口を上手く使っててすごく良かった。
9.11周りでアメリカに問題が多いことは事実だけど、「不当に容疑者(あるいは疑わしき人物)を長期間勾留する」って日本もやってたよねカルロス・ゴーンの時に。ゴーンが本当に不当に資金を使っていたかどうかは分からないけれど、108日も容疑だけで拘留してたのは今作と同じこと。
同じことをしていてもアメリカには元大統領の実名や写真を出せる映画を作れる文化がある。権力に背き退任した人を賞賛する記事を出す新聞社がある。日本はどうでしょうか。