「【恐ろしいテロを受けた"法治国家"アメリカが、国の威信をかけて行った非合法行為を暴いた作品。テロが惹き起こす負の連鎖を描いた作品でもあると共に、9.11を風化させない意義ある作品でもある。。】」モーリタニアン 黒塗りの記録 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【恐ろしいテロを受けた"法治国家"アメリカが、国の威信をかけて行った非合法行為を暴いた作品。テロが惹き起こす負の連鎖を描いた作品でもあると共に、9.11を風化させない意義ある作品でもある。。】
- 冒頭、"これは、真実である。"と、テロップが流れる。
製作はBBCである。
アメリカでは、今作品は作れないだろう・・。
ウサマ・ヴィン・ラディン達が行ったアメリカに対する3000人が犠牲になったテロは到底許される物ではないが、アメリカの威信を掛けた報復の凄まじさは「ゼロ・ダーク・サーティ」で描かれているが、この映画で描かれたアメリカの非人道的な行為も、相当に恐ろしい。
又、この作品は9.11を風化させない(もう、あの同時多発テロから20年になるのである・・。)意義ある作品でもあると、思う。-
◆感想
・ジョディ・フォスターが演じる人権派弁護士ナンシーの弁護する相手モハメドゥ・スラヒ(タヒール・ラヒム)が、アルカイダと関連している可能性がある事を知りながら、彼の母からの弁護依頼を受けるシーン。
- 彼女の強い、使命感に基づく、リーガルマインド。
日本でも"何であんな奴の弁護をするのだ!"という声をたまに聞くが、どのような人間にも、人権はある。それを認め、正式な裁判を行うのが、司法が機能している法治国家なのである。-
・国の威信を掛けて、テロへの報復を望むブッシュ政権。
スラヒを死刑第1号にするために、死刑判決を期待される起訴を担当するスチュアート中佐(ベネディクト・カンバーバッチ:今作では製作にも関わっている。「クーリエ 最高機密の運び屋」でも、制作総指揮に名を連ねていた。名優の域に達しつつ、映画製作者としての気概も感じる。素晴らしい。)の苦悩する姿。
調査を進めるも、決定的な事実は出て来ない・・。
- 彼が法を学び、キリスト教徒でもあった事が大きいのだろう。
友人がハイジャックテロで殺害されたにも関わらず。
裏切り者と呼ばれながらも、彼が下した重大な決断。
彼のリーガルマインドの強さは立場は違えど、ナンシーと同じである。
二人のグアンタナモ収容所での夕陽を浴びながらの短い会話が、印象的である。
"友人を沢山失ったよ。""私もよ・・。"-
・ラムズフェルド国務長官の指示により行われた"特殊尋問"の恐ろしいシーンの数々。
苦痛を伴う姿勢で20H。強制的な性的行為の強要。轟音のヘビメタ。水責め。果ては、”母親をグアンタナモ収容所に連れてくる”という脅し。
ー 今作では、MFR(記録用覚書。尋問方法、証言内容の全てが記されている。)という言葉が頻繁に出て来る。ナンシーが開示を求めるも、殆どが黒塗りされている。
が、度重なる請求の末、MFRに書かれていた事。
”スラヒに騙された!”と厳しい環境下、ナンシーと共に調査を続けて来たテリー・ダンカン(シャイリーン・ウッドリー:好きな女優さん。嬉しい・・。)はブチ切れるが、ナンシーは、”貴方は、出て行って・・。”と、素っ気ない。
彼女には、スラヒが人格無視の、”特殊尋問”により嘘の証言をしたことが、分かっていたのではないか・・。ー
□違和感を感じた部分
・"特殊尋問"をした側に、心の傷は残らなかったのであろうか。「ゼロ・ダーク・サーティ」では、そこがキチンと描かれていた。
そして、モハメドゥ・スラヒの無罪が確定した際の、グアンタナモ収容所署員の態度の変化。
又、無罪を勝ち取ったにも拘らず、更に勾留が続けられていた事が、テロップで流されるが、ここは、キチンと描いて欲しかった。トランプが関係していると、私は思ったのだが・・。
<法治国家、アメリカがテロへの報復のために、暴走して行く姿をリアリティー溢れる拷問シーンの描写を含め、暴いた作品。
ラストに流れるテロップも実に恐ろしい。
救いは、自由になったモハメドゥ・スラヒさんの自由で、明るい故国で過ごす笑顔が観れたことであろうか・・。
第二次安倍内閣が2013年に強引に通した「特定機密の保護に関する法律案」という稀代の悪法がある日本も、他人事ではないなあ、と思った作品でもある。>
政治が新たなチャレンジに希望を持たせられないのは確かだし、若い人たちが投票に行かないのは大人似責任もあるけど、僕は、若い人たちにも責任はあると思っていて、例えば、夫婦別姓だって、LGBT差別禁止法案だって賛成なら、自分以外の人の為に投票行動をすることは可能だし、そうした隅っこの人のために投票するとか考えられないのは、人のせいばっかりにして狭量な人達だななんて考えたりします。僕は、もともと家がお寺で自民党にサポーティブで、宏池会押しが長いんですけど、岸田さんも、野党にもしっかりしてほしい
現在の政府は、自分たちを脅かすような俊英が育たないように、格差は放置するし、イエスマンしか重用しないし、で国民の知的レベルを下げるようにしてるとしか思えません。人材が育たなければ、国益には反しますが、今の権力者にとっては、自分たちの地位が安泰になるので、結果的に利益になる。
そんな背景が少なからず、投票率にも影響してるのだと思います。
こんにちは。尋問のシーンでサラリとしか語られていませんが、アルカイダの初期にはアメリカは援助していたんですよね。
世界の警察であるために色々理屈をつけながら変遷するのでしょうが、BBCのように考察・検証してくれることで見るものの認識が新たになる作品は見応えがありますね。
ありがとうございます。BBC制作なんですね。
若い人にはつまらないだろうというレビューがあったので敢えて付け加えました。
それにしても海外には制作者として良心的な作品を作っている俳優さんが多いですね。