「痛快なのにモヤるのは、きっと弱者は弱者のままだから。」プロミシング・ヤング・ウーマン N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
痛快なのにモヤるのは、きっと弱者は弱者のままだから。
スカッとしきれないから、奥が深いというか、なんというか。
本作に思い出すのは、痴漢に遭うのは短いスカートなんかはいているからだ。
云々のやり取りである。
ならそうしたものを前にしたとき人の心から、
自制心や善悪の区別、良心なんてなくなっていても問題ないよ、
ということなのか。
社会の目という他人事と、当事者視点が交錯することで、
本質をあぶり出してゆくサイコ・ホラーのようで復讐劇のような本作。
キレ者主人公が単独行動、無双なだけにハラハラも止まらない。
加えて「正義を行っている」と信じて邁進する女性の
堂々たるたたずまいが痛快だ。
同時に、そうまで駆り立てる怒りや絶望はもの悲しさを誘い、
のっけからチープ感漂う楽曲に退廃的な雰囲気も重なれば、
醸し出されてくる破滅感に懐かしの「テルマ&ルイーズ」さえ思い出してしまった。
この辺り、弱者が誰なのか最初から示しているようで、
ただ中で主人公が頑張れば頑張るほどぐっときもする。
シナリオはアッ、と驚くようで案外、古典的でカタイ展開をなぞっていると感じている。
ただパンチがこれほどまでに効いているのはひとえに、
その弱者が最後まで救われることがないところにあるのだろう。
やっぱりそこは令和の「テルマ&ルイーズ」だからかも。
スカッとしきれずモヤモヤ残る。
ここが何よりいい本作だ、と思うのである。
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