「『若気の至り』を吹聴する態度は今すぐゴミ箱に捨てろ、と痛感させられる一作。」プロミシング・ヤング・ウーマン yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
『若気の至り』を吹聴する態度は今すぐゴミ箱に捨てろ、と痛感させられる一作。
クライマックスにさしかかったところで、ある曲が本作独自のアレンジで流れていることに気がつき、なかなか上手い選曲だな、と思った直後、そこには「お前にとっても他人事じゃないんだぞ」というメッセージが込められているのでは、と気づいて、ぞっとしてしまいました。
表題の「若く、将来を嘱望される女性」は、たしかにかつてのキャシーを言い表しているのですが、一方で、一体誰が誰に対してこの言葉を発しているのか、ということに思い至ると、この語に込められた皮肉、陰鬱さがずっしりと肩にのしかかってきます。前述の楽曲や表題をはじめとして、本作では全編にわたって様々な要素に複数の意味が込められているため、容易にテーマの全体像をうかがい知ることができない作りになっています。しかしながら、物語の筋は決して難解ではなく、むしろキャシーの復讐譚としての筋立ては非常に分かりやすく整理されています。このように十分に練り上げられた脚本を執筆しただけでなく、自ら監督も務めたフェネル監督は、本作が長編映画デビューとのこと。その才能には驚かされます。
ラストの展開は見事のひとことなのですが、他方でここまでしないと「彼ら」を法的に裁くことが難しいという実情も反映していると言えます。そのためやはり単に「面白い映画だった」と手放しで称賛できない、してはいけない、作品だと感じました。
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