劇場公開日 2021年5月21日

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「女性の経済的な立場の弱さ」茜色に焼かれる talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0女性の経済的な立場の弱さ

2024年1月24日
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鑑賞方法:DVD/BD

これだけ「雇用の分野における男女の平等」が言われても、厚生労働省などが取りまとめる賃金の統計などを見ると、まだまだ女性の方が、平均的な賃金は低いようです。

それは、女性であることを理由として、男性よりも低い賃金が支払われているということでは必ずしもなくて、男性に比べて女性の方が、より賃金水準の低い、臨時的・補助的な仕事に就いている割合が高いということでしょう。
そして、何かの時には、まずいちばん最初に雇止めになるのも、そういう臨時的・補助的な仕事に就いている方々であることも、想像に難くありません。

今回のコロナ禍では、飲食・宿泊関係を始めとして、関係業種の方々への影響は少なくなかったものと思いますが、上記のような理由から、女性への影響の方が、より大きかったものと考えます。評論子は。

そして、そういうことの余波というものは、得てしてより弱い立場の方々にしわ寄せされがちなのが現実と思いますし、今なお続いている「女性の経済的な立場の弱さ」ということもあるのだろうと思います。

本作の主人公が、理不尽な交通事故でシングルマザーとなった女性(良子)というのも、その意味で受け取りました。評論子は。
一家の大黒柱を失うこととで、その生活基盤の脆弱さが、一気に噴出してしまったということでしょうか。

一方で、良子の「筋の通し方」には、レビュアー諸氏の間でも賛否の両論があるようですけれども。
確かに、夕焼け空のように「茜色に焼かれて」も、なお曲げないという彼女のその信念については、それはそれとして受け取るべきなのでしょう。彼女の考え、人となりとして。
しかし、評論子としては、もう少し肩のチカラを抜いて生きても良いのではないかと、思わないわけでもありません。

そんなことにも思いが至ると、本作の題名の「茜色」は、良子の決意・覚悟の堅さを意味すると解釈することもできそうではありますけれども。
むしろ、評論子としては、この色が(朝焼けではなく)夕焼けを想起されるものであることから、これから本格的な夜を迎えるということで、「まぁ、頑張りましょう」が口癖の良子の気概の高さとは裏腹に、彼女の前途の多難を暗示しているようにも、評論子には思えてなりません。

それやこれやで、本当に、胸が痛む一本ではありました。

別作品『夜明けまでバス停で』と同様に、コロナ禍に苦しむ人々(とくに、まだまだ経済的には男性よりも苦境に立たされがちな女性)を描いた一本ということで、観終わりはしたものの、なかなかまとまらない同作のレビュー起案の参考という意味も兼ねて、観ることにした一本でした。

上記の別作品ともども、充分な佳作であったと思います。

talkie
talkieさんのコメント
2024年1月29日

こころさん、コメントありがとうございました。
「映画の受け止めは人それぞれ」…本当にそうだと思います。
学生時代(法学部)に教員が、「さあ、議論をしてください。法律は議論をしなければダメです。」と、まるで壊れたテープレコーダーか何かのように繰り返していたのを覚えています。
議論は、他の人の価値観に触れる唯一の方法なのですね。
このサイトでも、映画を通じて、レビューアそれぞれの「価値観」を知ることができれば、自分の「映画鑑賞力」にも磨きがかかると考えています。
今後ともよろしくお願いします。

talkie
こころさんのコメント
2024年1月24日

talkieさん
私自身、美しく燃えるような『夕焼け』に励まされる事が多いので、私はラストに希望を感じました。
作品の受け止め方は、人それぞれなので、色々な解釈が出来ますよね。

こころ