「はたして狂っているのは彼女か、それとも男ども(社会)か。」茜色に焼かれる レントさんの映画レビュー(感想・評価)
はたして狂っているのは彼女か、それとも男ども(社会)か。
主人公は言う、こんな社会でまともに生きていたら死ぬか、気が狂うか、宗教に入るかだと。
彼女は死んでもいないし、宗教にも入っていない。ならば彼女は気が狂っているのだろうか。
主人公田中良子は夫を事故で亡くし、女手一つで息子を育てている。そればかりか義理の父の介護施設の費用を賄い、あげくに夫の愛人の子供の養育費まで支払っている。
彼女は金が有り余っている資産家などではない。パートの仕事とは別に風俗で働きながらこれらの費用を賄っているのだ。
これはもはや正気の沙汰ではない。何故に彼女はここまでするのか。死んだ夫への当てつけであろうか。それともやはり気が狂っているのだろうか。
芝居が得意な田中良子(この国で平均的ともいえるこの名前がまた皮肉が効いてる)。本編では明らかに彼女が芝居をしているとわかるシーンがある。加害者側の人でなし弁護士と話しているとき、風俗店店長の暴言に無理に話を合わせているとき、明らかに愛想笑いを浮かべる。それはまるでこの世の理不尽さに散々打ちのめされたあげくに彼女が身に着けた自己防衛手段とも思えた。
夫を事故で失ってからというもの彼女はこの世のあらゆる理不尽さに誰よりも憤ってきたはずだ。だが、彼女は感情をあらわにせず平然と生きてきた、というより平然と生きている芝居を演じてきた。
誰よりも怒りをあらわにしたい彼女は息子に対してルールを守ることが大切だと諭す。芝居をして自らの本心を偽らなければ自分を抑えられず自分がルールを破ってしまうことを自覚しているのであろう。
そうやって芝居を続け自らを偽り続けたためか、彼女は自分の本当の気持ちがわからなくなってくる。それは中学時代に思いを寄せていた片思いの相手に再会したことで顕著となる。
自分の気持ちに戸惑いながらも、女としてこの気持ちは本物だと恋に突っ走る良子。しかしそんな彼女の思いはあっけなく踏みにじられてしまう。
今まで自分の気持ちを押し殺してきた彼女のたまりにたまったマグマが遂に噴き出す時が来た。この時、彼女は息子に対して今だけは母親とかいう立場は無しにしてくれと言う。
子を持つ「母親」故に自分を押し殺してきた彼女がついに一人の人間として自らの感情をあらわにする瞬間だった。
不倫相手をボコボコにしてルールを破った彼女だが、皮肉にもヤクザの顧問弁護士もしていた人でなし弁護士のお陰で事なきを得る。
女性が生きづらい社会。災害がひとたび起きれば真っ先に被害を受けるのは弱い立場の人間だ。今回のコロナ禍でも女性の自殺者数が際立っていた。男が作り上げてきた社会がいかに女性にとって生きづらい社会であったか。
こんなご時世でも女は最終的に体を売れるが俺たちは無理だという夫のバンド仲間のゲスな言葉がまさに象徴的だ。
彼女は言う。客の相手をすることは毎回自分が殺されているような気分だと。平然としているていの芝居で、あらゆるこの世の理不尽から気をそらさなくては彼女は気がくるってしまっていただろう。
まさに真正面から受け止めれば車に跳ね飛ばされていたほどに。そう、彼女の芝居は自己防衛なのだ。
今の社会で女性にとっての理不尽を一身に背負いたくましく、そしてしぶとく生きる良子の姿を通して逆説的にこの社会の理不尽さを描いた佳作。
ちなみに以前見送りとなった入管法改正案が今国会で恐らく通るだろう。外国人の人権を軽視する国家は自国民の人権も軽視するということを忘れてはならない。
映画鑑賞代金1550円(チケット屋で購入)、交通費往復560円
全削除されたレビューを復元。
こんばんは♪
共感コメントしていただきましてありがとうございました😊
やはり、電車賃を書いたのが消された理由かも?
すみません、冗談です。
レビューは残るけど非公開とは?
本レビューで消されるなら、経験された方々が納得いかないの、理解できます。
せっかく時間もとり考えて書かれた作品とも言うべきレビューを消されたら、疑問と共に憤りますね。不信感も持ちますね。
フィルマークスのことも少し聞きました。そちらで思う存分活躍されるといいですね。🍀
こんばんは♪
『ある男』に共感していただきましてありがとうございました😊
本作、消されたのですか?😱
わかりませんね、理由。
あっ、問い合わせしては駄目ですよ。不本意ながら、じっと我慢の子で再投稿。
再投稿は、無事なのですね。
基準がわかりませんね。🐯
風俗の客が女性に対する眼差しの象徴になってましたよね。とにかく、女性活躍とかいっても、最賃ギリギリのケアワークがメインですし、政治やメガバンクなど、権力が集まるとこには絶対に女性を入れませんね。たかだか映画レビューで全削除とかきついですよね。