「高齢者の暴走事故を思う」茜色に焼かれる kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
高齢者の暴走事故を思う
池袋で元官僚高齢者が起こした暴走死亡事故。なぜ逮捕されないのか、なぜ公判で無罪を主張できるのか、疑問とともに怒りを感じていた事件だ。ドキュメンタリー番組で、被害者家族である夫が、警察から妻と娘が事故当時着ていた服を返され、言葉につまったシーンが印象に残っている。撮影してるテレビのスタッフがボロ泣きして、こんなところ撮影してすみませんと謝っていた。それを観ながら思うのは、やはりなぜ自動車メーカーの責任などと主張できるのだろうということだった。
この映画では似たような事故が描かれる。どう見ても池袋のあれにインスパイアされたでしょという作り。ちゃんとブレーキではなくアクセルを踏むシーンがあった。でも亡くなった男性の妻は加害者から賠償金を一切受け取らず貧困にあえでいる。加害者家族へ怒りを見せずに淡々と生活している感じ。自分の中にある怒りが刺激されていく感覚だった。彼女は働いているホームセンターやピンサロで、男性たちから舐めた態度を取られても怒る態度を出さない。さらには息子まで舐められいじめられるという始末。観ている側としては怒りを覚えずにはいられない。
でも、いろんな問題が最終的に解決してスカッとすることはない。むしろなんにも解決していない。でも、彼女たち家族が生きていく希望だけは残ったと言える。スッとしないのに、後味が悪いわけではない。妙な終わり方だった。
コロナ禍での女性の貧困を正面から扱っているような作品。こんな映画もないとダメだよな。
あの加害者には映画とは違う形で審判がくだされ、ちゃんと罪を認めて、年齢とかを考慮されずに罪を償ってほしいものだ。
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