「今観るべき価値のある映画として心に残る。とにかく尾野真千子!」茜色に焼かれる kok zenさんの映画レビュー(感想・評価)
今観るべき価値のある映画として心に残る。とにかく尾野真千子!
尾野真千子の映画での代表作になることは間違いないだろう。
どこにでもいそうな主婦から風俗嬢、そして「獣」にまで、様々な顔を日々使い分け「お芝居」する一風変わった主人公・田中良子。
腹に一物ありそうで少し痛々しくも映るほど強い母親像がぴったりで、鬼気迫る演技は「圧巻」の一言。彼女にしか出せない色が存分に発揮されていた。
和田庵や片山友希の好演も、彼女に引っ張られて引き出されたものが大きいのではないか。あと若手の「ぎこちなさ」を蒼く魅力的に見せる石井監督の手腕も。
永瀬正敏も確固たる安定感で彼女たちをしっかり支えている。
そして、そこには居ないはずのオダギリジョー夫の面影が全編に渡って感じられるのもこの映画の優しさに繋がっている。
要素がかなりてんこ盛りではあるが、監督の怒りが伝わるからマイナス要素とは思わない。むしろ計算を度外視したところが石井裕也作品の好きなところ。
コロナ禍の日本を初めて本格的に描いたチャレンジングな映画としても価値が高いが、あくまで主体はその中で愚直に生きる母子の物語。安易にすべての問題を解決しようとしない姿勢にも好感を持った。
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