「ちょっとついていけなかった…。」茜色に焼かれる グレンさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっとついていけなかった…。
尾野真千子と永瀬正敏の演技力の高さには目をみはるものがありましたが、ストーリー展開に取ってつけたようなところがあったり、ありきたりなイメージに安易に乗っかっていると感じられるシーン(スローモーションでの跳び蹴り、夕焼けと堤防と二人乗り自転車etc.)が気になりました。
主人公に意味不明な長ゼリフをたびたび吐かせる意味が分かりません。何度も出てくる「まあ頑張りましょう」という決めゼリフも、理屈やコンテキストを超越していて当惑するばかり。
終盤に主人公たちが悪者を懲らしめる場面で、加勢する仲間が絶好のタイミングで現れるのがあまりに唐突で不自然に感じました。真実味を持たせる工夫が足りないような気がします。
そんなこんなで、作品の世界についていけないという感覚が最後までぬぐえませんでした。
東池袋で起こった事件を下敷きにしたと思われる設定がありましたが、あれは官僚一般に対する世間の偏見を助長する演出ではないでしょうか?
実際に起きた事件をヒントにするのはかまいませんが、もう少し配慮すべきだと感じました。公務員のみなさんは心を痛めているのではないでしょうか。
それと、事情があって収入が少ない人が公営住宅で暮らす権利はすべての人に保証されているはずです。そのことについて息子から尋ねられたヒロインには、あいまいに言葉を濁して済ますのではなく、「税金に支えられて生活していることをとやかく言われても気にする必要はない。堂々と胸を張っていればいい」ぐらい言ってほしかったです。
コロナ禍でつらい思いをしている人たちのこと心に刻むことの大切さは感じられました。もう少し時間をかけて細部を練り上げれば、さらにすばらしい作品になったのではないかと思います。