「まあ、がんばりましょ。」茜色に焼かれる 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
まあ、がんばりましょ。
マスク着用が日常となった昨今。抗いきれぬ不条理という痛みに、ようやく馴れてきた毎日。そんな現実をそのまま切り取った映画だった。ほんと、我慢に耐える人間が損をする世の中だよ。ズルをしてのさばったり、弱い人間にマウントをとってくる奴らは憎らしい。そいつらを庇うつもりはサラサラないけど、そうなっていくのもちょっとわかる。弱さなんだろう。その点、守るものがある人間は、そこで意地を張って踏ん張れるんだろうな。
「まともに生きていたら、死ぬか、気がちがうか、宗教に入るしかないでしょ?」そう割りきって、ケツを捲った人間の強さがここにある。
最近、びっくりするほどの茜色に染まった夕焼けを見ることがある。そう、この映画の空のような。これがこの世の色か!ってほどに見惚れてしまう。これまでだってそんな夕焼けはあったはずだが、その空に気付くようになったのは、自分の中の感情の幅が広がったせいなのだろう。この母子を見つめながら涙がこぼれるのもそのせいだ。
この先この母子が生きていく姿を見届けることはできないが 、たぶん、びっくりするくらいの底力で生きていくんだと思う。そして、いつかまた潰れそうになったら 、その時も励ましあうのだ。精気を得、救われた良子はまたもやこうねだるだろう。「純平、も一回、同じこと言って」と。
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