「ファンサービスがいっぱいだーマン🕸 細かいことは気にせずに鑑賞するのが吉、か?」スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンサービスがいっぱいだーマン🕸 細かいことは気にせずに鑑賞するのが吉、か?
スーパーヒーローが一堂に会するアメコミアクション映画「MCU」シリーズの第27作にして、”親愛なる隣人”の活躍を描いたMCU版『スパイダーマン』シリーズの第3作。
また、サム・ライミ版『スパイダーマン』シリーズ(2002-2007)や『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ(2012-2014)、『ヴェノム』シリーズ(2018-)とも繋がりのある一大クロスオーバー作品となっている。
ミステリオの陰謀により、全世界にスパイダーマンであるとバレてしまった上、犯罪者の烙印を押されてしまったピーター・パーカー。
好奇の目に晒され、日常生活を送ることもままならなくなった彼はドクター・ストレンジに助けを求めるのだが…。
原作はスタン・リー。
○キャスト(MCU)
ピーター・パーカー/スパイダーマン…トム・ホランド。
ミシェル・ジョーンズ…ゼンデイヤ。
スティーヴン・ストレンジ/ドクター・ストレンジ…ベネディクト・カンバーバッチ。
ハッピー・ホーガン…ジョン・ファブロー。
J・ジョナ・ジェイムソン…J・K・シモンズ。
ベティ・ブラント…アンガーリー・ライス。
○キャスト(ライミ)
ノーマン・オズボーン/グリーン・ゴブリン…ウィレム・デフォー。
ピーター・パーカー2/スパイダーマン…トビー・マグワイア。
○キャスト(アメイジング)
マックス・ディロン/エレクトロ…ジェイミー・フォックス。
ピーター・パーカー3/スパイダーマン…アンドリュー・ガーフィールド。
○キャスト(ヴェノム)
エディ・ブロック/ヴェノム…トム・ハーディ。
製作はケビン・ファイギ。
第30回 MTVムービー・アワードにおいて、作品賞を受賞!
全米歴代興行収入第3位、世界歴代興行収入第6位というメガヒット作品。やっぱりみんなスパイダーマン好きなんすねぇ…。
総評としては、たしかに楽しい!…でも歴史に残る傑作とか号泣必至の感動作とか、そういうテンションでは無いかな…。みたいな感じ。
アトラクションとしてはとっても面白い作品だと思う。
「スパイダーマン」のファンにとってはとっても嬉しい、サプライズプレゼントのような一作であることは間違いない。
とはいえ、一本の映画としては非常に不細工。
ファンへのサービスを過剰に盛り込みすぎているあまり、脚本がおざなりになっている。
まずもって気になるのは、今回の大騒動の原因は全てピーター・パーカーとドクター・ストレンジの不手際にある、という点。
ピーターの未熟さやドクター・ストレンジの傲慢さを描きたいが故の展開だったというのは理解できる。…のだが、その結果としてメイおばさん死去という笑えない結果になってしまい、なんとも後味の悪い感じになってしまった感があるのは否めない。
どうせお祭り映画なんだから、「いやー、めっちゃ大変な事になっちゃったけど、何事もなくって本当に良かった良かった😊」みたいな軽いノリで済ませてしまった方が良かったんじゃない?
いやいや、メイおばさんが死なないと「大いなる力には、大いなる責任が伴う」ことをピーターが学ばないじゃん!という意見もあろうが、過去のスパイダーマンと違いトムホ・ピーターは師匠であるアイアンマンの生き様と死に様をバッチリ目の当たりにしているわけで、「大いなる力には、大いなる責任が伴う」ことは誰よりも良く理解しているはず。
メイおばさんには悪いが、死に際に「大いなる〜」なんて言われても、ピーターからしてみれば「うん、それ知ってる知ってる」てなもんだろう。
このモヤモヤ感を打ち消す為にも、やはりマルチバースによる混乱はヴィランに引き起こしてもらってですね、それをスパイダーマンズが阻止するという展開にすべきだったと思います。
MCU世界にもノーマン・オズボーンが存在していて、若くして亡くなった息子ハリー・オズボーンを蘇らせる為に科学技術を用いてマルチバースの扉を開いた結果、ヴィランズがMCU世界に闖入。ノーマンもグリーン・ゴブリンに取り憑かれてしまい暴走を始める。
うん、これで完璧!✨
…ってこれ完全に『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)と一緒やんけ!!∑(゚Д゚)
そう。結局そこなんです。
今回の映画、「マルチバース」という概念を用いたからすごいみたいな事になってますけど、それ既に『スパイダーバース』でやってる訳なんですよ。
今回の大騒動の原因がピーターにある、というのも『スパイダーバース』との差別化を図ったが故なのだろう。
本作は『スパイダーバース』へのカウンター的な側面のある映画である。じゃあ本作が過去作である『スパイダーバース』を上回る完成度だったかと言われると…。ねぇ?
まあ『スパイダーバース』が完璧すぎるので、それと比べるのも酷だとは思うけど。
あとどうしても触れておかなくてはならないのは、本作があまりにもハイコンテクストな作品であるということ。
この『ノー・ウェイ・ホーム』、マンキンで鑑賞するためには下準備として「ライミ」シリーズ3作+『アメイジング』シリーズ2作+「MCU」シリーズ26作+『ヴェノム』シリーズ2作=33作もの映画を鑑賞しなければならない。
デアデビルが登場したという事はNetflix版のドラマも押さえておかないといけないし、フェーズ4のドラマシリーズも鑑賞した方が良いだろうし…。とか考え始めると、もうどれだけ予習しても間に合わない🤯
まあ実際のところ、そこまで履修済みの観客はほとんどいないとは思うけど、少なくとも「ライミ」「アメイジング」「MCU」の『スパイダーマン』を観ていることが前提の映画である。
最低7本の映画の上に成り立っている作品として、この程度の面白さで良いの?もっとやれたんじゃないの?とは思ってしまう訳です。
ファン向けの作品であるのは間違い無いと思うが、ファンだからこそ嫌な気持ちになるんじゃないのか?と思ってしまう点もチラホラ。
個人的に一番嫌だったのはドック・オクの扱い。「それ本名?」とか「海水飲む?」とか、そういう小手先のギャグがすごく鼻についた。『スパイダーマン2』(2004)のオクタビアス博士は凄くシリアスなキャラクターだったんだからさ、そこは茶化さないでよ…😓
ヴィランズの「治療」という展開にも違和感はある。
たしかにドック・オクやグリーン・ゴブリンの凶暴化は外的要因が強く、それを取り除くことは有意義なことかもしれない。
ただ、エレクトロやサンドマンは、能力によって変貌したというよりは元々あった心の闇が能力によって増幅したみたいな感じなわけでしょう?それって能力を消し去る=「治療」という単純な図式が成り立つことではない気がする。
というか、そもそもサンドマンは『3』で改心してるでしょ。作中の描写を見るに彼は『3』後の存在な訳だから、もうヴィランじゃなくない?なんでこの人暴れ回ってんの?
事程左様に、不満点や疑問点の多い作品であった。
とはいえ、やはり3人のスパイダーマン揃い踏みにはテンションが上がったし、アクション要素の面白さは他のMCU作品を凌駕していたと思う。
賛否が分かれそうなエディ・ブロック/ヴェノムの扱い方も、肩透かしといえばそうなのだが彼らのキャラクターに合っていて好印象。
好きか嫌いかでいえば普通に好きな作品だし、なんかいまいち盛り上がりに欠けるフェーズ4においてようやく気持ちがアガる作品が誕生してくれた!という嬉しさもある。まあ細かいことは気にせず、ユニバのアトラクションに乗ったような気持ちで楽しむのが吉ということなのでしょう!
この先、トムホ・ピーターはMCUから離脱するのかな?自分としてはその方が良いんじゃあないかと思いますが、しばらく動向を探っていきましょう😄
…実はこの映画で一番印象に残っているのは、「トビー・マグワイア老けたな∑(゚Д゚)」ということ。いやまああれから15年も経ってるから当たり前なんだけど。
ライミ版世代としては、オジさんスパイダーマンが活躍する『スパイダーマン4』を、トビー主演で制作してくれたらテンションぶち上がる!🕷️🕸️