「ありがとう、全てのスパイダーマン」スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ありがとう、全てのスパイダーマン
サム・ライミ版3本、アメイジング版2本、別作品参加3本、アニメーション版1本、そしてMCU版2本…。
これまで作り続けられてきた“親愛なる隣人”、スパイダーマン。
中でも斬新だったのは、アニメーションの『~スパイダーバース』。
“マルチバース”を取り入れ、別次元のスパイダーマンたち(ウーマンも)会する。
アニメだから出来る表現、世界観だと思ってた。
しかしまさかそれを、実写でやってのけるとは…!!
ご存知のように前作『~ファー・フロム・ホーム』のラストで、ミステリオの遺した映像を報じたデイリー・ニュースによって(初めて見た時はびっくりしたアノ人!)ミステリオ殺害だけではなく、正体までバラされてしまったピーター。
“親愛なる隣人”の生活は一変。マスコミから追われ、学校では色んな意味で注目の的。捜査当局に拘束され、世間からも時には非難の声を浴びる。
何より辛いのは、恋人MJと親友ネッド。
3人共、大学進学を考える身。3人一緒の大学を受験するが…、不合格。その理由が、“現在のお騒がせの事情を考慮して”。
自分一人ならまだしも、二人は何も悪くない。ただ自分と関わっただけ…いや、自分が二人を巻き込んでしまった。
後悔。やり直す事は出来ないのか。魔法のような力さえあれば…。
…魔法のような力?
そうだ!
あの最強宇宙魔人と共に闘った魔術師ヒーロー、ドクター・ストレンジ。
彼に頼んで、時を戻して貰う。
が、ストレンジにもそれは無理。“タイム・ストーン”はあの時破壊され、もう無い。
しかし、別のアイデア。ウォンは危険過ぎると止めるが。
世界中からスパイダーマンの正体がピーターである事を忘れさせる魔術を使う。
高難易度の魔術。だがこの時、ピーターが色々注文付け、結局失敗。
…いや、それどころか、とんでもない事に!
私に頼んで世界を変える前に大学と掛け合え!…と怒られたピーター。進学大学のお偉いさんを追って、ブリッジへ。
さあ、いよいよその時が!
まさしく“作品と作品の壁”を壊すかのようにブリッジの下から現れたのは…
『スパイダーマン2』からドクター・オクトパス!
予告編やポスターなどで姿は見てるけど、やっぱり本編に登場すると全然違う。
旧ヴィラン=ドクター・オクトパスと現スパイディの一戦。
誰がこれを想像していただろうか…!?
それにしても、一体何故…?
何処から、どうやってやって来た…?
言うまでもなく、ストレンジの魔術。
さらに、ピーターの“邪魔”。
これによって複雑なマルチバースが歪み、ピーターを知る別次元のヴィランが現れてしまったのだ…!
まさかドクター・オクトパス一人だけじゃない。ストレンジがすでに一人…いや、一体(?)確保。
『アメイジング・スパイダーマン』からリザード。
ドクター・オクトパスも確保。
彼らを確保し、元の世界に戻す。MJとネッドも協力。
SNS上の目撃情報などを頼りに追跡。
そこで対したのは…
『アメイジング・スパイダーマン2』からエレクトロ。
『スパイダーマン3』からサンドマン。
確保。
そして、最後の一人。
『スパイダーマン』からグリーン・ゴブリン。
一体、何処に…?
“作品世界”的には異常事態発生!だけど、
“作品”的にはこんなにも嬉しさが止まらない。だって、
アルフレッド・モリーナ、ジェイミー・フォックス、そしてウィレム・デフォー、かつて演じたキャストがそのまま続投!
トムホとレギュラーメンバー、今回参戦のカンバーバッチと加われば、何と豪華キャスト!
(残念ながらトーマス・ヘイデン・チャーチとリス・エヴァンスはアーカイブ映像と声のみらしいが)
ゴブリンも確保…と言うより、彼の方から“助け”を求めてきた。
自分の知らない世界。自分の世界に帰りたい。
全員確保した。後はストレンジの魔術で元の世界に戻すだけ。
その時ピーターが思う。
皆、元の世界ではスパイダーマンと闘って死ぬ運命にある人たち。このまま戻れば死にに戻るだけ。
それが運命。それぞれの宇宙の理。ストレンジは情け容赦なく。
SFやファンタジーを知っている者なら知っている。時空や別次元へ干渉してはならず、と。
彼らはそれぞれの世界では人々を恐怖に陥れた“罪人”。が、今ここで少なからず知り合ってみたら、心の底から悪人じゃない。
何かあるんじゃないのか、別の方法が。
彼らの運命を変える。死から。救う。
時空や別次元への干渉に反してでも。ピーターはそういう青年。
しかし、それに反対するのは…
てっきりスパイダーマンとストレンジが組んで、ヴィランズと闘うと思っていた。
まさかまさかの逆転の発想!
ヴィランズを救う為に、スパイダーマンがストレンジと一戦交える!
ちなみに、スパイダーマンvsドクター・オクトパスがワクワクなら、スパイダーマンvsドクター・ストレンジは最初の大きな見せ場。
ストレンジの魔術がやっぱり驚異的映像。
動き回るスパイダーマンを手中に収めるかのように、翻弄。
苦戦のスパイダーマンは自分の得意分野を活かす。
その“得意分野”で難を逃れ、ヴィランズたちを治療。
ヴィランズたちも疑心暗鬼。果たして、成功するか、失敗して死ぬか。
結果は、成功。あるヴィランは“苦しみ”から解放される。
にしても…
ここまでで目ぼしい見せ場と言ったら、vsオクトパスとvsストレンジくらい。まあ、話は充分に面白いけど。
それがこのコロナ禍で、米現在6億ドル超え、全世界現在14億ドル超え…?
ただいい話だけで終わり…?
…な訳ない!
予告編やポスターではドクター・オクトパスがメインヴィランな感じで推されていたけど、いよいよ本性を現す!
『スパイダーマン』全シリーズの全ヴィランの中でも、一番印象的なアイツ! やっぱり、アイツがメインヴィランじゃないとね!
この暴走によって、他のヴィランたちも暴れ始める。
“優しさ”で彼らを救おうとしたのに…。
そう、奴は言う。お前の優しさ、甘さ、人の良さが悲劇を招く。
それを教えた叔母も同類。
そんな訳ない!
絶対に間違った事はしていない。
本当に皆を救おうとしていた。
じゃあ、悪いのは…
誰…?
そして、取り返しの付かない悲劇が…。
責め出したらキリがない。
暴走し始めた奴。
ストレンジに抵抗してまで、彼らを元の世界に戻すのではなく救おうとした自分。
正体を知らない世界にして貰おうとした自分。
MJやネッド、叔母さんに危害や迷惑が掛からぬよう。
それは優しき考えでもあるが、自分範囲の考えでもある。
酷な言い方だが、全てこうなったのも、自分の我が儘、自分の無責任さが招いた事。
人々を恐怖に陥れるヴィランの野望を打ち砕いたり、時には宇宙へ行って最強魔人と闘ったり、成長していると思ったら…。
成長して、子供に戻って、その繰り返し。
リザードが言う。しっぺ返しが来る、と。
これをシリーズ屈指の名台詞に皮肉に言い換えよう。
“大いなる責任には大いなるしっぺ返しが伴う”
ピーターは姿を消す…。
それでもやっぱり手を差し伸べたいピーター。
MJとネッドは必死に行方を探す。
ネッドは思わぬ力を発揮して(!?)、やっと探し出したピーター。
しかし、そのピーターは…!!!!!
過去ヴィランズたちの登場が話題になってるのに、ネタバレNGとなっている本作。
確かにこれは、トップシークレット。いや、スーパーシークレット。関係者でうっかり漏らしたら、クビレベルだろう。
とは言いつつ、自分は何となくそんな感じがした。だってそりゃあ、せっかくの“マルチバース”だもん。
しかし、実際にその“姿”と“登場”と“共演”を見た時、久々にこんなにもワクワク興奮ニンマリが止まなかった。
愉快なトークも。まだまだ動ける? 一人は腰痛気味らしい。もうそんな歳か…。
だって、一方は8年ぶり。もう一方は15年ぶり!
だけど本作、楽しいだけの“同窓会”じゃない。
恋人や親友も支えになるが、スパイダーマンの傷を癒せるのは“スパイダーマン”だけ。
一人は身内を失った。
もう一人は最愛の人を失った。
そして自分も…。
何故、自分だけ…?
何故、こんな苦しみを…?
そもそも、何故自分がスパイダーマンなんかに…?
自分から望んでスパイダーマンになった訳じゃない。
選ばれてスパイダーマンになった訳じゃない。
運命…なんて言葉で容易く片付けたくない。が、
なったからにはそれなりの理由がある。
スパイダーマンズが胸に刻む言葉。
“大いなる力には大いなる責任が伴う”
彼らがその言葉を分かち合うシーン、3人が絆を抱き合うシーンは、『スパイダーマン』を見続けてきて良かったと、本当に感動した。
クライマックス。
スパイダーマンズ、ヴィランズ、MJとネッドの助っ人、ストレンジも現れての最終戦。
入り乱れ、大迫力のVFXとアクション、豪華キャスト…もう訳が分かんなくなるくらい、スッゲェ~!
ジョン・ワッツ、いつの間にやらこれほどの超大作エンタメを撮る監督になろうとは…!
アクション、コメディ、青春、ドラマ性…2時間半一切ダレる事ナシのテンポの良さ!
自分が招いてしまった今回の事件、闘い。
ただ“倒す”のではない解決方法。
再びストレンジに頼む。意を決して。
まるでそれは何処か、かつて『アベンジャーズ/エンドゲーム』で身を犠牲にした恩師アイアンマン/トニー・スタークと通じるものがあった。
その責任を償う。
皆がそれぞれの世界に戻り、この世界にも再び平穏が戻った。
が、辛辣で、ほろ切ない世界。
以前スパイダーマンの敵視を伝え続けるニュース。
そんなのはどうでもいい。ピーターの切なさは…
MJやネッド、ハッピーも自分の事を知らない。
自分で望んだ事とは言え、切ない。あの温かさ、楽しさ、愛おしさはもう…。
いや、全くゼロからではない。また出会いから始められる。それが、青春だ。
それがあっての『スパイダーマン』。
人助け、市民を守る。
人々を恐怖に陥れるヴィランから守る為、闘う。
時には宇宙にまで行って、脅威の敵とも。
そんな彼を、我々は忘れはしない。
“親愛なる隣人”。
ありがとう、全てのスパイダーマン。
サム・ライミ版、アメイジング版、MCU版、全て観ていますが、
やはり、サムライミ版の第一作目が、強く印象に残っています。
本作は、過去シリーズの集大成と言える作品でした。
スパイダーマンファンには堪らない作品でした。
サム・ライム版以来の感動を覚えました。
さて、こちらのサイトで、ベテランレビュアーの近大さんに質問があります。
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