「ご褒美」スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム よしえさんの映画レビュー(感想・評価)
ご褒美
スパイダーマンを語る上で外せないエピソードが2つある。ベンおじさんとグウェン・ステーシーの悲劇。この2つは、過去のソニーのスパイダーマン(サム・ライミ版とマーク・ウェブ版)でも少し形を変えつつも要素として取り込まれていた。
MCUのスパイダーマンではこれが省かれていたのだけど、まさか今作でどちらも取り込まれるとは思わなかった。しかも後者は、グウェンを救えなかった(アンドリューの)ピーターが、MJを救うという形で。
ずっと噂では流れていたから、トビーとアンドリューが出てきたのは「おおっ」と驚きつつもそこまでびっくりしなかったのだけど、一番びっくりしたのはチャーリー・コックスのマット・マードックが出てきたところ。これは完全に予想外だったから本当に声が出てしまった。思えば『ホークアイ』にヴィンセント・ドノフリオのキングピンが出てたのがこれの伏線だったのか。ケヴィン・ファイギが思わせぶりなことを言っていたからいつかは出るのだろうと思っていたけど。
そういった小ネタも含め、この映画はある意味ソニーのスパイダーマンをずっと見てきた人たちや、MCUをドラマも含めずっと見てきた人たちに対してのご褒美のような映画かもしれない。JKシモンズのジェイムソンとかもそうだ。3人のスパイダーマンが並んでスウィングするなんて光景、サム・ライミの1作目で想像できただろうか?
冒頭に書いたMJを救うアンドリューのピーターも良かったけど、激高してノーマン・オズボーンにグライダーを(明確な殺意を持って)叩きつけようとしたトムホのピーターをトビーのピーターが止めるのも良かった。過去、そのつもりがなくても死なせてしまったヴィラン達を、ただ命を救うだけでなく、やむなく悪の道に走ることになった原因を取り除いて生きるチャンスを与えるなどという結末の付け方がいかにもピーターではないか。ピーターが3人揃うとこんなすごいことができてしまうのだ。
取り留めもなく感想とも言えないような文章を羅列してしまったが、隅から隅までずっとファンでいたわたしにとって満足を通り越した喜びを感じる映画だった。ありがとう。