劇場公開日 2021年8月27日

「複雑な展開を追う難しさはあるけど、映像で丁寧に説明してくれる姿勢に好感が持てる一作。」鳩の撃退法 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5複雑な展開を追う難しさはあるけど、映像で丁寧に説明してくれる姿勢に好感が持てる一作。

2021年9月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「この男が書いた小説(ウソ)を見破れるか」というキャプションが入っていますが、映像だと展開が早いため、原作を読み込んでいる人を除いて、謎を解くどころか展開を追うので精一杯という観客も多いのではないでしょうか。またこれは映像ならではの演出なのですが、物語上の「現実」で語り手となっている津田(藤原竜也)と、小説上の人物として登場する津田とは、表現上の区別などを特にしていないため、今目の前で展開している状況は「現実」なのか「虚構」なのか、しばしば混乱してしまいます。もちろんこの認識上の混乱自体も、タカハタ秀太監督の演出意図で間違いないでしょう。ただ後半では様々な伏線を説明過多にならない程度に映像で示してくれるので、細部まで全て理解できなくとも、物語を味わったという満足感を与えてくれます。

物語の主軸はある「モノ」を巡る虚々実々の駆け引きなのですが、その「モノ」はまさに字義通り「マクガフィン」であって、それ自体に大した機能や意味はなく、むしろ「それ」を巡る互いの思惑の交錯がドラマを引っ張っていきます。騒動の中心となる、津田という一見軽薄そうに見えていながらもその真意が掴みにくい人物を、藤原竜也はこれ以上ないほど見事に演じています。

そして本作の舞台は富山。『大コメ騒動』、『はりぼて』といい、『おもいで写眞』といい、近年富山を舞台にした作品の数がすごいですね。「富山映画」というジャンルが確立しそうな勢いです

yui