劇場公開日 2021年6月4日

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「超ユルいんだけど、それはそれでよし。」カムバック・トゥ・ハリウッド!! 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5超ユルいんだけど、それはそれでよし。

2021年5月31日
PCから投稿

牙が抜けたデ・ニーロ。という言い方は失礼な気もするが、油が抜けたようなデ・ニーロもまたいい。映画業界を口八丁で渡り歩いてきたC級映画専門のプロデューサーという役どころで、借金に首が回らなくなって作る気もない映画をデッチ上げ、主演俳優を事故死させて保険金で稼ごうとする。もう、映画愛と損得がゴッチャになってとっちらかったことをやらかすキャラクターは、まさにデ・ニーロが演じ続けてきたきた狂気スレスレの系譜に連なるもの。ただし本作は超ユルいコメディで、デ・ニーロが凄みを感じさせたりはしない。『グランパ・ウォーズ』もそうだが、ほとんど人畜無害となった今のデ・ニーロも味わい深いのだ。

これ、古いウェスタンへのオマージュだけに、もっとお金と時間をかけてフィルムで撮れていたら?と思うところもあるのだが、まあ、贅沢は言っていられない映画作りの話でもあるので、ルックの安さもまたご愛嬌か。ヘビーで長期に渡った『アイリッシュマン』の撮影に疲れたデ・ニーロが「なにか軽いものをやりたい」といい出して本作を選んだというエピソードもいい。

村山章