「園子温の集大成かつ新境地」エッシャー通りの赤いポスト 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
園子温の集大成かつ新境地
カリスマ映画監督の小林正が新作映画を撮るらしい。
しかも、その映画のオーディションは演技素人でも大歓迎という。
オーディションの応募用紙を投函するべく、次々とポストに走る者たち。
そして、オーディションには個性強めな役者(仮)が集まり、プロデューサーのコネで人気女優も参戦。
果たして、誰がこの映画の華となるのか⁉︎
園子温監督、凄いものを作ってくれた!
昨年公開だけど、これ、今年のベストにさせてください!
園子温テイストを挟みつつも、今までの映画とは全く違う面白さ。
今回のインディーズ作品は、監督の原点回帰ともあって新鮮な気持ちで楽しむことができた。
過去作のセルフオマージュはパンフレットにも書いてある通り。
『地獄でなぜ悪い』のあの熱量よ。
スクリーン越しに登場人物約50人の生き様をガンガン見せつけられた。
正直言うとオーディションは淡々と進んでいくだけで、面白くなくはないんだけど何かが物足りないような…
でもそれは前フリで、オーディションによる結果が出てからが本編。
前フリのオーディションシーンは『愛のむきだし』のカウントダウンのようで、爆発を待ち流れ続けるボレロのようだった。
「それぞれの人生が、上がったように見えて、実は下がっていることもあり、人生はまるでエッシャーの描く階段のようだ」(パンフレットより)
人生はそう上手くはいかない。
夢半ばで死んでしまった人、世間に存在を認めてもらえなかった人、あの人の1番になれなかった人、主人公にはなれなかった人。
でも、そんなエキストラたちが主役になる瞬間、これは私のための映画だ!と思ったのは私だけではないはず。
エキストラでいいんか?
決められた通りの人生でいいんか?
自分の人生くらい主役になれ!
主役を乗っとろうと走り出した彼ら彼女らの勇姿に、思わず目頭を押さえてしまった。
数多くの個性的なキャストの中でも、安子役の藤丸千さんと切子役の黒河内りくさんの破壊力は異色だった。
小林監督心中クラブもなかなかカオスで好き。
伏線回収要素も意外でこれもまた新鮮だった。
無理にとは言いませんが、渋っているなら無理にでも観に行ってください。
映画「仮面」のオーディション応募用紙(現実で有効)&完成台本付きで1000円という、コスパ最強のパンフレットもオススメです。