「笑えるけれど笑えなくなっていくの社会派ドラマ」ピザ! つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
笑えるけれど笑えなくなっていくの社会派ドラマ
解説にもコメディと書いてあるし、作品の雰囲気もあらすじもコメディのそれであるが、中々ハードな社会派ドラマだった。
主人公は、配給でテレビが家にきた、というくらいの貧しい地域に暮らす兄弟だ。学校にも行っていない。父が収監中らしく、その弁護士費用のために、強制されてはいないものの毎日小銭を稼ぐ。
そんな二人がテレビCMで見たピザを食べてみたいと奔走する。
純粋で、基本的に善良な二人は、真っ当な方法でピザを入手しようとする。つまりは買おうとするわけだ。盗んだり騙したりしようと画策しないところは良い。まあお金の稼ぎ方には少々問題アリだけれども。
中盤、いざピザ屋へというところからドラマは激しく転換する。お金を持っているだけではピザを買えない現実だ。
作中ではっきり明言されていないものの、インドは階級社会だ。法的にカーストが撤廃されていても階級意識は根強い。
そして、インドだけではなく世界中で起こっているであろう、印象による決めつけだ。
最近観たアメリカの刑事ドラマで、アフリカ系の刑事が応援にきた警官に拘束される場面があった。自分は味方だ。警官だと言っても聞く耳持たず武力制圧をしてきたのだ。彼がアフリカ系だったから。
それと同じようなことが本作の兄弟にも起こる。
まだ純粋すぎた弟は何が起こったのか理解できなかったかもしれないが、徐々に社会の現実を知りつつある兄には衝撃の出来事であったに違いない。
この兄弟が貧しさから抜け出すための道程は果てしなく遠い。ただお金を稼げればいいという問題ではないのだ。そのお金だって簡単に稼げるものでもない。
ガッツリ社会派ドラマに転じていても物語のエンディングは明るく希望があるようなものだったことは喜ばしい。
身分や肩書きで(アメリカなどの場合は人種なども)差別されるべきではない最初の一歩は踏み出されていたように感じた。それが企業側のPRだとしても。