「夜明け前」明け方の若者たち よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
夜明け前
黒島結菜さんが良い。
サクラダリセットとはまるで別人で大人っぽくて妖艶で北村さん演じる「僕」が心を奪われるのもさもありなんと思わせる良い出来。
僕自身冒頭から心を掴まれてこの黒島さんの誘いに乗るように映画の世界にのめり込んでいった。
北村さん演じる「僕」もいい。
世の中に抱く“夢”と厳しい“現実”の狭間で揺れ動くまだ大人になりきれない学生から社会人への移行期間を上手いこと表現していた。
特に配属先が総務に決まった時の反応なんか「このダサい所で働くの」という心の声が聞こえてくるようで素晴らしかった。
その他にも表情で心情が伝わってきて凄かった。(表情で芝居をしているとかそう言う事ではなく、表情を変えなくても心が伝わってきた)
話自体も途中まで特段何か大きな展開が起きるわけではないのだが不思議と観れてしまった。
一つは社会人になりきれないという状況が僕自身同じような状況に置かれてるので妙に共感できたのもあるかもしれない。
ところが途中からどんでん返しが起きる。
もちろんその種明かしの前にも伏線のように違和感は張られていたのだが、全く違う系統の展開を予測していた為大変びっくりした。
良い驚きで更に作品に引き込まれた。
余計な事だが、明大前で出逢い下北沢辺りで仲を深めるというのは去年公開された映画「花束みたいな恋をした」を連想してしまって少し困った。
もちろん原作がある作品だしたまたま似ただけなのだが去年の「花束〜」がまだ残ってるので余計に連想してしまった。
だからこそ純愛系のストーリーを連想して余計にどんでん返しに驚いたというのはあるのだろうが。
最後にこの映画を見終わった後に感じたことを一つ。
この映画が社会人なりたての人に向けた映画であることは明白だが、その世代に対して「社会の歯車になるな!クリエイティブに生きろ!」みたいなテーマを伝える作品が世の中に多い中、この作品は「歯車でもいいんだ。その中で懸命に回ればいい。歯車になることは悲しいことでもなんでもないんだよ」というようなメッセージを感じた。