劇場公開日 2021年7月9日

「ネズミを主役に再構成された物語」100日間生きたワニ くりあさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ネズミを主役に再構成された物語

2021年8月12日
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気の合う仲間達とのゆるい日常がワニの死で突然壊れ、そこから残された仲間達が改めて前を向き歩き出すまでの物語。

「ワニが死ぬ100日前から当日までの日常を描く」という原作を、その後の日々を加えた上で、主役をネズミに変えて再構成。
結果、元のテーマでもある、なんでもない日常というかけがえのない日々をより強く押し出した。

原作リアルタイムは「ワニがどう死ぬのか」にしか興味なく飛び飛びにしか見ていなかったし、完結後の炎上騒動もどうでも良かった自分でも、本映画でワニの死後が描かれたことで、より「ワニのいた100日間」が深みを増したと思える。

酷評されているカエルだが、たしかに「ワニの物語」としては異物である。
しかし、本映画は「ネズミの物語」として作られていると考えると、壊れ失われたものを再構築する本映画では、必要な形のピースであったと思える。あのウザさ含めて。
(カエルの抱える過去の設定は安直ではあるのだが、そこ掘り下げても仕方ないし、バイカーにはそこそこある話なのでまあ……。)

「ワニの物語」を期待した人には不満が多いだろうが、全くの先入観なしで全体を俯瞰してみたら、世で言われるほど悪い作品ではない。
何が適切だったかはわからないが、「100日後に死ぬワニ」「100日間生きたワニ」というタイトルに引っ張られて、ワニ不在の後半が異物に見えてしまうことが、本作の不幸であるように思える。

ワニの事故を冒頭に持ってきたのはちょっと引っかかるが(ネズミの入院やヒヨコを助けるシーンなどが直後に来て、伏線と回収が転倒している)、その他は丁寧に演出されており、感情を表す表情、尻尾含めた動きであの絵柄なのに感情に訴えかけてくる力は本物。
評価としては、もうちょっとつけてもいいかもと思いながらも星3。

しかし、この上映時間でフルプライスなんですか?強気すぎない?というのは言っていい。

くりぽん