アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイドのレビュー・感想・評価
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「ありがとう、トニ・エルドマン」のサンドラ・フラーが脇役ながら好演。ベースと鍵盤のデュオ、ブレーマー/マッコイの劇伴も良い
まずキャスティングがいい。主人公アルマ役のマレン・エッゲルトは、そろそろ中年の域にさしかかろうかという年齢で、美人ではあるが地味目で堅物の印象。研究一筋で恋愛にはあまり縁がなかったのだろうなと自然に思わせるルックスだ。アンドロイドのトム役には端正な顔立ちのダン・スティーブンス、的確な身体動作で機械的な動きを見事に演じてみせ、驚きとともに笑いも誘う。英国人俳優ゆえドイツ語に訛りがあるのだが、それをしっかり脚本に反映したのも巧い。2人に比べ出番は少ないが、「ありがとう、トニ・エルドマン」で最高だったサンドラ・フラーが相談員役で健在ぶりを見せてくれる。
人間と機械(ヒューマノイド、AIなど)の恋愛の可能性を描くSFテイストの作品は多数あるが、人間が男性、機械が女性という組み合わせに偏っていたのは、SFの作り手に男性が多かったのも一因だろう。原作の短編小説を書いたエマ・ブラスラフスキ、監督のマリア・シュラーダー(役者でもある)はいずれもドイツ出身の女性で、かの国で女性の社会進出が進んでいることを喜ばしく思うし、女性側の視点や考え方を学べるという点で男性にとっても貴重だ。
とはいえ、本作はハードSFというわけではなく、どちらかと言えばアルマとトムの関係性の変化を通じて、人間と機械、あるいは人間同士のコミュニケーションとは何かという、ある種哲学的な思索を促すような内容になっている。ジャンルは違えど、平野啓一郎氏の小説『本心』で描かれた、仮想空間で故人を再構成する“ヴァーチャル・フィギュア”を介して問いかけるテーマに通じるものがあると感じた。
サウンドトラックのセンスもとてもいい。本作で初めて聴いたのだが、アコースティック・ベースのジョナサン・ブレマーとキーボードのモーテン・マッコイのデンマーク人デュオ、ブレーマー/マッコイによる北欧ジャズ風味の空間と残響を活かした音楽が、映画のエモーションに心地よく寄り添う。Spotifyで多数の曲が聴けるので、気に入った方はぜひ探してみて。
想像以上に奥深い”感情のドラマ”だった
とろけるようなラブコメディかと思いきや、その実、人間性のずっと奥深い領域へといざなってくれる作品である。近未来SF的な装いがあるわけではないのに、ほのかにそれが香るのは、ベルリンの街並みが持つ特別な雰囲気のせいか。ダン・スティーヴンスにしても、喋り方や身のこなし、目の動きだけで、その特殊な役柄をまっとうしてみせる。こういったアイディアや演出、カメラのアングル一つで観る者の想像力を刺激するあたりに作り手の巧さが滲む。主人公が楔形文字の研究者という設定から見えてくるのは、太古の昔からアンドロイド技術に至るまで、絶えず”感情を伝えること”に腐心し続けてきた人類史の片鱗だ。一方の横軸には、研究実績や私生活、老いた父親との関係性や、過去の悲しみの出来事などが幾重にも折り重なる。その縦軸と横軸が交錯した人生のその場所で主人公は何を思うのか。押し付けがましさのない自然体な結末が独特の穏やかな余韻を残す。
都合の良いアンドロイドが好き
私たちは、もはや人間よりもスマホといる時間が一番多くありませんか?
街中や電車、公共の場所で周りを見渡すと、皆さんスマホに夢中です。だから、人型のアンドロイドができたら、恋人も友人も不要になってしまうかもしれないですね。
アルマもトムが必要になってしまいました。そりゃ、何でも自分に都合良く動いてくれれば好きになりますよ。本当に人間は自己愛が強いです。
治安が悪化してきているので、これからは護身用のロボットが売れると思います。
ラブサスペンスの様相
ロマンスやコメディにカテゴリされている作品であるが、実際はヒューマンドラマであったように思う。
ロマンス作品であれば、もっと「今」だけを見る盲目さみたいなものが必要だったろうが、この作品は今よりも未来を見すぎていた。今よりも老後の孤独のケアみたいなね。
そして、コメディと呼ぶにはシリアス過ぎて辛いものがある。どちらかといえば笑えないんだ。面白くないという意味ではなくて、真面目な問題を扱い過ぎてるんだ。
とはいえ、作品そのものは普通に楽しめる作品だったかな。
AIものとしてもロマンスものとしても、コメディとしても中途半端で特筆すべきところはないし、広く浅く作られた感があるけれど、なぜだか醸し出されるラブサスペンスのような緊張感で観ていられた。
で、一体何だったん…でした
高評価が多い中、この作品の良さを全く理解できてない自分の感覚がおかしいのかと思ってしまうけど、ほんと全然面白く思えませんでした
主人公に共感ができず、主人公のとる行動も理解できず、ただひたすら可哀想な女の人にしか思えず
アンドロイドのトムに最初はすごく冷たくしてたのに自分の心が弱くなってあんな事があった次の日には優しくしたり、なんか痛い女でした
そんな感じでずっと観ていたので、あのラストも「え、そこで終わり?」で、結局どうなん?でした
優しくて完璧なダン・スティーブンスがアンドロイドなら人生の伴侶として最高かもしれないけど、やっぱりそれはアンドロイドで、人間は人間に愛されたいんじゃないのかなと私は思います
ダン・スティーブンス演じるアンドロイドが考えうる中で人生で一番悲しい事は?という質問に対してのアンドロイドの答えの「ひとりぼっちで人生を終える事」、これは本当にそうなのかも
ダン・スティーブンスのちょっとした表情の変化、眼差し、動き方、本当にアンドロイドみたいでとっても良かったと思います
恋人ができるまでのお試し
仕事優先で恋愛に時間を
割いてこなかった女性アルマ
お試しで高性能AIアンドロイドと
暮らすことに。
アンドロイドのトムが
素晴らしくイケメンで会話、
佇まいが気遣いまでスマート
アルマの好む様にカスタマイズされて
…理想な彼になっていく
やはりアンドロイドと思うと
…戸惑いもある
気持ちが追いつかない
何処に行ってもコミュニケーション
能力の高さに驚く
相手を不快にさせない
アルマがネガティブなことを
言っても解決案をだして
よい方向に導いて
仕事の面でも頼りになる
もう。言うことなしの様にも思う
お試し終わる頃に
彼のやさしさ理想の彼
トムの様な人はいないだろし
喜怒哀楽を含めて人なので
感情の面では物足りなさを感じるけど
不快に感じることは減るかも
この先どうかは分からない
アルマに新たな恋愛が
はじまるまで
のお試し。
三週間という時間は丁度いいのか
短いのかわからない
人の心はやはり複雑
もっとポップな恋の行方をイメージしていたが、思ったよりも人の心をしっかり描いていた印象。
全体を通して、一般大衆的な恋愛観とそれを斜に観る現実味のせめぎあいの中で少々散漫になった感もあったが、所々で映るドイツの歴史的建物と現代建物が調和した街並みがストーリーをほどよく盛り立てていたと思う。
えっドイツ映画なのっ、的な意外性も本作の魅力か。
真面目なSFです
昨年劇場で見て、アマプラに配信が来ていたので再度鑑賞。
序盤のどこかズレた理想の美男アンドロイドに辟易する女性とのやり取りはコミカルで楽しかったです。そのやり取りでアンドロイドもまた少しずつ学習し成長していく…AIってこういうののことじゃなかったっけ?と、別作品について思いを馳せてしまいました。
しかし終盤に掛けては孤独に寄り添ってくれる優しいアンドロイドを、易きに流れる人の習性に警鐘を鳴らすという形で拒絶する彼女の強さが少し悲しかったです。
でもあのラスト、はっきりとは描写されてないんですよね……彼女はあの後どうしたのか…想像が膨らみます。
思いの外、深かった
ありがちなアンドロイドと人間の恋物語と思いきや…
どう頑張ってもモテない男性や、過去に引きづられて前に進めない女性…
欲しいものを何でも造り出せる世界と、寂しいまま死んでいく世界。
これからの時代のテーマだろう。
現代でもフィギアと結婚し生活する人も実在する。
何が幸せなのか…これは人それぞれの価値基準の話。
その人が幸せであれば、周りがとやかく言うことでもない。
どう生きようが、十人十色。
生まれてきたからには幸せになる権利は誰にでもあるのだから。
アンドロイドが将来伴侶に
マレンエッゲルト扮するアルマは、ダンスティーヴンス扮するトムと初めて会った。トムはアルマのどんな質問にも瞬時で答えダンスに誘った。3週間で理想の相手が作れるそうな。いわゆるアンドロイドを恋人にと言う事か。とりあえず3週間使用してみて評価する様だ。 モニター使用って事だね。でもアルマが白けているからあまり面白くないね。でも後半ようやく乗ってきて愛を感じる様になってしまったら終わりかな。アンドロイドが将来伴侶になることもありえるかもね。テーマとしては面白かったよ。
ハンサムなアンドロイド
ダンスティーヴンスが美男のアンドロイド役。スティーヴンスは靴職人と魔法のミシン(2015)でもアンドロイドじゃないが美男代表みたいな感じででてきた。イギリス人だが新顔としてアメリカへ進出したThe Guest(2014)からスティーヴンスは置き物風な美男扱いをされることがあった。だがじっさいは技芸巧手かつ苦労人だ。顔がぱりっとしていてぱりっとしすぎているからキャラクターが限定的になっているがちゃんと見れば内容のある俳優なのが解る。ダウントンアビーを追っていた人なら自明のことだろう。充てられる役とはちがい愛妻家としても知られている。
ここでのスティーヴンスは置き物風美男子な見た目を生かしつつ芸達者ぶりもみせる──とても解った使い方をされている。ドイツ語に堪能なところからして驚いた。
アンドロイドといってもSFではないのでテクノロジーやハードウェアとしての辻褄は抜け落ちている。
もっていきたいところはロマンチックコメディというより思いやりやメランコリーで、思い出がヒューマニズムを形成していることに意味を見いだそうとしている。とてもよく書けているが洗練されすぎでじぶんのような労働者には食い足りなかった。
Maria Schrader監督がShe Said(2022)のまえにつくった映画。
She Saidのレビューでも書いたが本作も女性がつくったことがわかる映画だった。ただしフェミ観点には立っていないので男を責めるパラメータはない。格違いの大人度を漂わせつつ、柔らかく主張する。どこがどうってことは言えないのだが女性がつくっていることがわかる紗が全体を覆っていた。
かえりみるにMeToo運動のきっかけとなった話にフェミを介入させたら鼻息の荒い映画になってしまったにちがいない。しなやかなMaria Schrader監督にShe Saidをふったプロダクションは慧眼だと思った。
ドライブマイカーが受賞した2021年のアカデミーに出品されている。
Imdb7.1、RottenTomatoes96%と82%。
グレタガーウィグ似の主役Maren Eggertのほかサンドラヒュラーもでていた。
スティーヴンスはほかにフランス語も話せるそうだ。
ちなみに靴職人と魔法のミシンは海外で酷評に遭いトーマスマッカーシーの汚点とまで言われている。が、個人的には好き。とりわけサンドラーがスティーヴンスに変身しているシークエンスがよかった。俺もスティーヴンスの顔でバーとか行ってみたい。
結論のモノローグが難しかった。
実験結果のモノローグが肝なのに、字幕追い切らなくて無念。
主人公の結論はアンドロイドは恋人にはなり得ないってことだったと思うけど、そこをちゃんと理解したかったな。吹替でみたいけど、吹替作ってくれるかな?
私はアンドロイドで欲望や寂しさはだいぶ埋まるんちゃうかなって思ってる。想像では。だから主人公の結論、知りたい。
かなり真面目なSFです。
アンドロイドを人生の伴侶とできるかの実験。 日々の経験をインプット...
アンドロイドを人生の伴侶とできるかの実験。
日々の経験をインプットしていくにつれて、次第に完璧な恋人に成長していくアンドロイド。
すると、もはや人間との交流ができなくなり、もちろん子孫を残すこともできないから人類は滅亡する。
そんな大局的な思考はさておき、自分のことだけを考えるならば、アンドロイドを伴侶とすることは十分にありだと思った。
考えさせられる
最初のエラー起こしてトムが連れ去られて行くシーンでこの映画にグッと惹き込まれた。そしてトムと愛し合うようになるのも規定路線。ただアンドロイドと知っていれば、虚しくなる。感情を持たない動物と触れ合ってもすぐに飽きるだろう。昔、ロボットのペットが発売されたと思うけど、今もあるのだろうか?これが普及しなかったようにロボットには人間の役目は無理なのだ。でも介護とかには逆に人間より優れていると思うので裕福な人々にはそのようなロボットが開発利用される様になるのかも知れない。ロボットの掃除機は現在普及してきている。次はロボットの介護や配達、運転など活躍を期待している。
硬い殻を脱ぎ捨てて!!
予想と違う映画でした。
もっとロマンティックで楽しめるかと思ったのですが。
理想のパートナーとなるように設計されたAndroid
(ダン・スティーヴンスは申し分なく完璧なAndroidに見えます)
アルマ(主人公の女性)にとって自分仕様に作られたAndroidの、
自分向け・・・がそもそも、受け入れられないのでしょう。
頑なな心にこちらも興醒めですよ!
ああ見えてアルマは、未知な野生的でアルマの知性を見向きもしない
俺様な男が向いてるかも。
アルマの気持ちを汲み取って、そして思いやってアルマに合わせてくるトムに
ムカつくのかも。
知性的で理知的な女は、深層心理として粗野な男を求めているのかも知れない
考える暇がないほど強引にづかづかチカラずくで奪った方がいいのかも!!
トムとアルマの感情の行き違いを細かく描く映画は、恋愛の想定外の意外性がなく、
盛り上がりを欠けるのだ。
信じろよ、アルマ。
トムに寄り添ってみろよ、アルマ。
(トムは絶対に裏切らないし、傷つけない)
(それがAndroidトムの仕様なのだ)
ドイツ・ベルリンのジェームズ・ジモン・ギャラリーに研究するオフィスのあるアルマ。
ベルリンには博物館島と言う施設があり、世界遺産です。
多額の予算の捻出に苦労したそうで、ジェームズ・ジモン・ギャラリーは2019年に、
やっとオープンした。
ガラス張りのとても現代的な建築物だ。
博物館島は巨大な施設で、その博物館の大きさに目が眩む。
天井の高い大理石の博物館の中にいる人間は、蟻のようなもの。
しかし映画はその一方でアルマの生活感を現す。
85歳で認知症で介護の必要な父親。
父親の住居は、日本家屋の一般的な古い家みたいで、
アルマは親の介護に心を砕く何処にでもいる優しい娘。
なんか分かる気もする。
Androidとのラブ・アフェアにときめく程、アルマは子供ではない。
AndroidはAndroid。
人間ではない。
ラストの切なさは、13歳の初恋・・・トマスとの別れを
今も欠落と捉えているアルマの悲しみに寄り添う。
決して甘くないビターな映画。
トム(Android)は、どうなるのだろう?
消去される?
作り直されて別の被験者に愛される?
Androidも、なんだか哀しい。
ゾクリとくる後味
楔形文字のベテラン研究者と超美形アンドロイド(ダン・スティーブンス!)の期間限定の同居実験。全ドイツ女性の憧れを投影していてもヒロインのツボにはちっともハマらなかったアンドロイドが、共に暮らすうちにどんどんヒロインの好みになり・・・。
その過程にユーモアありエスプリありで、クスクスしたりニヤリとしたりホロリときたり。ハッピーエンドなのにゾクリとくる危機感のような後味をもたらすところが、この映画の真骨頂かもしれない。
AIの解析で人の気持ちや本音をここまで探しあて、寄り添えるとしたら、人間と付き合う意味は果たして・・・⁈
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