「タイトルなし」さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について えみりさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
叙情的で不思議な映画。ラブーデの話は酷かった。そして、教授の振る舞い。ナチの影。生きる者と死ぬ者が逆。ベルリンはこういうまちだったのか。
そしてラストはドラマチックすぎる。でも人生とはこういうものかもと思う。
映画中の詩のような言葉が美しい。
「人の尊厳の時代が始まる。」
「理性では権力は得られない。」
美しい恋の物語。
優しい母親と息子。
ひどく心を揺さぶられた。
ケストナーの心象なのか、やはり当時のベルリンが本当にカオスだったのか、すごい描写だった。
ラブーデの公園での力強い演説。彼の出自。快楽に生きる父と彼の後悔。銃にのめり込むラブーデとラブーデが好きだけれどそれは受け入れられないファビアン。
こんな風に語りが寄り添う映画もNHKみたいか。
レストランから追い出される浮浪者をテーブルに呼び、タクシーから出る老婆を手伝ってチップをもらう。母との別れのハグの間にお互いにバッグにお金を入れるシーンは美しい。こういう主人公だからこそ、泳げないのに飛び込んで死ぬのだ。
友人を死に追いやった糞豚(本当に糞豚)を殴る。
その間にもナチは少しずつ忍び寄る。原作も映画も本当に素晴らしかった。
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