「焚書の世界が来る前に水の中へ」さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
焚書の世界が来る前に水の中へ
いかにも30年代冒頭のベルリンだなと知らないくせに懐かしい感じがするが、決して過去でなく世界中の「今」と、そんな「今」に生きる若い人たちを映画は描いている。ベルリンの歩道の上にいきなり、その時にはまだない、ホロコーストの犠牲となったユダヤ人の名前を記した躓きのプレートが映ったりもする。二人の語り手(女と男)の声が響きあい、これから何が起きるか私達に教えてくれたりファビアンやケストナーの言葉を投げかけてくれる。出会ってすぐ、まだ恋に落ちていない寸前のコルネリアとの場面で耳にする「ハーモニカ」の歌。若々しく可愛らしい歌い方で、マレーネ・ディートリッヒとは異なる明るさがあった。
音楽、挟み込まれるモノクロの記録映像、無声映画の台詞画面、アップ、上から斜めから下からの、それから鏡から見せる映像は美しくも躍動感と不安感でいっぱい。ファビアンが大学構内で飛びかかって階段から奴を突き落としたのは当然だ。汚い醜い言葉で手紙を書いただけでなく、読み手の尊厳を奪い殺した。そして学問上は知的であってもそれ以外では無能で何が今自分に求められているのか判断できない教授にも絶望した。職業も恋愛も失った若者は絶望する、でもそんな彼らに「生きることそのものが素晴らしい仕事なんだよ」と語りかけるのが大人の役割だと思う。
泳ぎを習おう。確かに泳げた方がいい。でも泳ぐというのは水の流れに抵抗しないで身を任せることでもある。だからファビアンは泳げなくて良かったのかも知れない。ケストナーは生きてくれた。
トム・シリング、適役だった。親友の最後の手紙をレッシングの本に挟んだファビアン、水に入ってから泳げないことに気づくファビアン、普通の生活をする両親の元で育ったファビアン、母親や困った人を思いやるファビアン、美しく力強い文章を綴るファビアン。恋するファビアン。どのファビアンも誰もが自分の中に思いあたる。
展覧会情報ありがとうございます。
西洋美術館はそういえば改修工事してましたね。
なんだか楽しくなってきましたー。
たまには美術館に行かないと、萎れます(笑)。
はい、ぜひ平日にご鑑賞くださいませ。
図録が分厚くて3,900円してて、迷ったのですが、買いませんでした。
ちょっとのぞいたら、若いリヒターと、トム・シリングが似てました!
年譜も詳細なので、いい本かもしれないけど、重い…。
ドイツ関係の展示って、あと何がありましたっけ?
映画のレビューと関係なくてすいません。
昨日、有休取って、リヒター展に行ってきました。
10時に予約して、5分前に到着、チケット購入済の人と、これから購入する人の列ができてました。
開館と同時に100人くらいは入館したかも。
どこから見てもいい展示になっているので、空いているところを探しながら、見ました。
常設も見て、13:30に出る頃には、これから入る人も多くなかったので、平日昼過ぎならゆったり見られるかもしれません。
リヒター展は各年代のスタイルを網羅してて、良かったです。
ぜひご予約を!
時代背景も相まって、悲しさよりも哀しさ全開でしたが、ところどころみせていたボケともいえない感じがラストにピークを迎えて、なんだか私には拍子抜けでした。
あっ、ちなみに私も実際に寝てはいませんよw